図8-20 西日本における瑞浪層群と同時代の堆積岩及び瑞浪層群堆積後の火山岩の分布
図8-21 瑞浪層群を掘削したボーリングコアの岩相柱状図と顕微鏡観察に基づく鉱物組成の垂直変化及び岩石に含まれる斜長石の屈折率の頻度分布
瑞浪超深地層研究所の周辺には今から約2000万年前から1500万年前に瑞浪層群と呼ばれる地層が堆積しました。日本列島はかつてアジア大陸と陸続きでしたが、瑞浪層群の堆積とほぼ同時期に日本海が形成され、西南日本は時計回りに、東北日本が反時計回りに回転して現在のような配列になりました。このときには日本海沿岸では火山活動が生じましたが、瑞浪層群と同時期の地層が分布する岐阜県から瀬戸内海沿岸の地域では火山活動はなかったとされていました(図8-20)。
私たちは以前、瑞浪層群が堆積した年代を調べる研究を行った際に、地層中に火山灰が含まれることを見いだしました。しかし、限られた時期の情報であったため、瑞浪層群の広い層準を掘削したボーリングコアから砂岩を採取し、火山灰の混入を探る研究を行いました。
火山灰は一般には鉱物と火山ガラスで形成されます。しかし、古い時代の地層では火山ガラスは沸石などの鉱物に変化してしまいます。そこで、火山灰起源の鉱物を探すわけですが、瑞浪層群は多くが花崗岩やより古い時代の堆積岩から供給された砂や泥で形成されているので、その他の岩石から供給された鉱物を探すことにしました。具体的には、重鉱物と斜長石です。
分析の結果、瑞浪層群の砂岩は最下部の一部を除いて火山ガラス若しくはその変質物を含むこと、鉱物組成から(1)黒雲母と曹長石及び灰曹長石が卓越するタイプ(2)角閃石と曹灰長石が卓越するタイプ(3)輝石と中性長石が卓越するタイプに分類できることが分かりました(図8-21)。花崗岩には重鉱物として黒雲母,斜長石としては曹長石が含まれることから、(1)は基盤の花崗岩から、(2)と(3)は火山灰として供給されたと考えられます。また、岩石の化学組成も考慮すると、瑞浪層群に火山灰を供給した火山活動は二つのフェーズに区分でき、この変化は火山活動の変遷を示すと考えられます。
瑞浪層群中の火山灰は、鉱物組成が異なることから、日本海沿岸の火山から運ばれたものではないと考えられます。また、瑞浪層群には多量の火山灰が含まれていることから、火山の場所は特定できていないものの、火山活動は瑞浪地域の近傍で生じたと考えられます。この研究によって、これまで知られていなかった中部日本〜西日本にかけての地域で、日本海の形成と同時期に火山活動が生じていたことが分かりました。