8-12 緩衝材中の放射性核種の移行を予測する

−圧縮ベントナイト中の統合収着・拡散モデルの開発−

図8-27 圧縮ベントナイト中の統合収着・拡散モデルの概念図
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図8-27 圧縮ベントナイト中の統合収着・拡散モデルの概念図

統合収着・拡散モデルは、(a)間隙水化学,収着,拡散モデルを整合的に取り扱う点,(b)主成分であるモンモリロナイトの収着モデル(イオン交換・表面錯体)と均質間隙中の静電相互作用を考慮した拡散モデルを組み合わせる点が特徴です。

 

図8-28 統合収着・拡散モデルの適用性評価の例
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図8-28 統合収着・拡散モデルの適用性評価の例

統合収着・拡散モデルによって、(c)圧縮ベントナイト中のpH,(d)多様な条件でのNp(V)の収着分配係数,(e)Np(V)の見かけの拡散係数のモンモリロナイト部分密度(モンモリロナイト成分のみに着目した場合の密度)に対する依存性を定量的に説明することができました。

 


放射性廃棄物地層処分において緩衝材として用いられる圧縮ベントナイト中の放射性核種の収着・拡散現象は、その長期安全評価の根幹をなす現象です。この収着・拡散現象は、収着分配係数(Kd)及び実効拡散係数(De)として表され、その定量的な理解が信頼性の高い安全評価において不可欠となります。安全評価では、多様な地球化学条件や不確実性を考慮する必要があるため、それらの影響も含めた収着・拡散パラメータの設定が必要です。ここで考慮すべき多様な条件に対するデータを、全て実測することは困難です。このため、ナノスケールの複雑な間隙構造を有する圧縮ベントナイト中の核種移行メカニズムに関する最新の知見を反映しつつ、多様な核種と条件での収着・拡散挙動を予測可能とする統合収着・拡散モデルを開発してきました。

統合収着・拡散モデルは、圧縮ベントナイト中の主成分であるモンモリロナイトの収着・拡散への支配的寄与を仮定し、間隙水化学,収着・拡散を表現するモデル概念とパラメータを整合的に取り扱う点が特徴です(図8-27(a))。収着モデルは、1サイトの静電補正を考慮しない表面錯体モデルと1サイトのイオン交換モデルを組み合わせたモデルを選定しました(図8-27(b))。収着モデルパラメータは、主要核種を対象に、多様な地球化学条件をカバーする収着データセットをもとに導出しました。このモデルによって、圧縮ベントナイト間隙水中のpH(図8-28(c)),多様な環境条件影響を含むNp(V)の収着データ(図8-28(d))を定量的に説明することができました。

拡散モデルの基本概念は、負に帯電した粘土表面における静電的な相互作用による陽イオンの濃集と陰イオンの排除,電粘性の効果を電気二重層モデルによって表現し、平均化されたナノスケールの均質な間隙構造とを組み合わせたモデルです(図8-27(b))。この拡散モデルを、上記の間隙水化学と核種収着モデルと統合することによって、圧縮系での収着・拡散パラメータを評価する体系を構築し、Np(V)の見かけの拡散係数(Da)の密度依存性を良好に説明することができました(図8-28(e))。さらに、多様な核種への適用性を確認しており、統合収着・拡散モデルが、複雑な化学種を含む多様な核種と環境条件に対する収着・拡散挙動の予測にも適用可能であることを確認しました。