表8-2 供試体の仕様
図8-25 一軸圧縮強度と飽和度の関係
表8-3 圧裂引張試験結果
図8-26 ヤング率と飽和度の関係
高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の研究開発を幌延深地層研究センターで実施しています。この施設から採取した稚内層珪質泥岩(間隙率が30〜50%と高いのが特徴)を用いた力学的試験から、この岩石は含水状態によって体積が変化し、水分が変形・破壊挙動に影響を及ぼす可能性があることが分かってきました。
坑道を掘削すると岩盤の飽和度が変化することから、設計で用いる岩盤の強度特性に対する水分の影響を把握するために、飽和度をパラメータとした一軸圧縮試験と圧裂引張試験を行いました。また、稚内層珪質泥岩には、堆積時及びその後の続成作用で形成された層理面や縞状構造が認められることから、層理面等が岩石の力学特性に与える影響についても評価しました。
試験に用いたのは、地表から深度300 m以深で採取した稚内層珪質泥岩です。供試体は、一軸圧縮試験及び圧裂引張試験では、それぞれ載荷方向が、層理面に対して垂直及び平行となる2種類としました(表8-2)。
飽和度の影響については、強度特性を表す一軸圧縮強度(図8-25)及び圧裂引張強度(表8-3)は、乾燥状態で高く、飽和度が高くなるにつれて低下しましたが、剛性を表すヤング率(図8-26)には飽和度の影響は認められませんでした。層理面の影響については、圧縮場である一軸圧縮強度及びヤング率には影響が明確には認められませんでした(図8-25,図8-26)。一方、引張場となる圧裂引張強度(表8-3)は、層理面に対して垂直に載荷した方が水平に載荷した場合に比べて1.4倍(飽和状態) 〜1.5倍 (乾燥状態) 高いという結果が得られました。圧縮強度及びヤング率には岩石基質部の特性が表れ層理面の影響は小さく、圧裂引張強度には層理面の離れやすさが表れたものと考えられます。
今回の試験結果から、稚内層珪質泥岩の強度特性は飽和度に依存し、飽和度が低い方が圧縮強度と引張強度は高いことが分かりました。また、強度特性は層理面に対する方向性があることも分かりました。このことは、間隙率が高く層理面を有する堆積岩の場合、岩盤の飽和度や層理面と坑道の配置との関係を考慮して、坑道の力学的安定性を評価することの重要性を示すものです。