9-3 核融合プラズマの磁場変動を計測する

−シンプルで高い性能の磁気センサーを開発−

図9-7 磁気プローブ型磁気センサーの新旧比較

図9-7 磁気プローブ型磁気センサーの新旧比較

セラミックと金属のみの材料で作られています。位置/形状制御用1種類と不安定性観測用2種類をまとめました。従来型から大きくするなどで感度が10倍になりました。

 

図9-8 ロゴスキーコイル型磁気センサーの新旧比較

図9-8 ロゴスキーコイル型磁気センサーの新旧比較

従来型は無機質絶縁ケーブル(MIC)を密に巻いているためX線写真では線が不明瞭ですが、新型では銅線が奇麗に並んでいることが確認できます。

 

図9-9 新旧反磁性ループ型磁気センサーの断面の比較(イメージ図)

図9-9 新旧反磁性ループ型磁気センサーの断面の比較(イメージ図)

従来の1芯のMICを用いた場合に対し、4芯のMICを用いるととてもシンプルな構造とすることができます。

 


核融合炉ではプラズマを磁場で閉じ込めます。磁場はコイルだけでなくプラズマに流れる電流でも発生するため、磁場を測ることによってプラズマの様々な重要な特性を調べることができます。そのため、磁場を計測するために用いられる磁気センサーは核融合プラズマにとって最も重要な計測器となります。磁気センサーは導線をぐるぐると巻いたもので、巻いた内側の磁場の変化を測ることができます。プラズマを囲む真空容器内のプラズマの直近に設置するため、高温や放射線に耐え、また、超高真空内でガスを出さないように金属と無機質のみで作る必要があります。

磁気センサーでプラズマの位置と形状が分かります。また、プラズマ内でどのような悪い事柄(不安定性)が起こっているかも調べられます。これらのためにJT-60SA用に位置/形状制御用1種類と不安定性観測用2種類をまとめた磁気プローブ型磁気センサーを開発しました(図9-7)。セラミックにタングステンの回路を密に配置してこれをコイルとしているため、コンパクトながら高い感度を持ちますが、さらにセラミックを大きくするなどして、感度を従来型の10倍にすることができました。配線にはステンレスの管に導線と絶縁用にセラミックを封じた無機質絶縁ケーブル(MIC)を用いますが、万が一の故障の際も交換が簡単にできるように、新たなコネクタを開発しました。

ロゴスキーコイル型磁気センサー(環状の導線とこれを中心に螺旋状に巻き戻した導線で構成されるコイル)を用いてプラズマ内に流れる電流を計測することもできます。これまでは直径0.5 mmのMICを直径5 mm程度,長さ約9 mに螺旋状に巻いたものでしたが、JT-60SA用にMICを用いない新しいタイプのロゴスキーコイルを開発しました(図9-8)。裸の導線をセラミックで直接固めたもので、芯線が太いため壊れにくく、より早い電流の変化を捉えられるようになりました。JT-60SA用では最長16 mもの長いものも製作できました。

さらに、反磁性ループ型というプラズマを周回して囲む2対の磁気センサーを用いるとプラズマがどれだけのエネルギーを維持しているかも分かります。これは核融合プラズマの性能を調べるために最も重要な値です。これまでは4周と3周のMICを1対にして使用していましたが、JT-60SA用には4芯のケーブルを採用して、あたかも見かけは1周ずつしかない反磁性ループを開発しました。反磁性ループは測定する磁場の1万分の1の精度で計測しなければならないため、取付けにとても高い精度が必要ですが、とても簡単な構造が可能となり(図9-9)、精度良く取り付けることが可能となりました。