図9-21 核融合原型炉の炉構造概念及び機器名称
図9-22 核融合原型炉における定期保守時に発生する放射性廃棄物の管理シナリオ
図9-23 定期保守時に発生する放射性廃棄物の機器のリサイクルに基づく減容効果
核融合炉から発生する放射性廃棄物は、低レベルであっても世代を超えて長期間の管理を必要とするものがあることから、社会受容性と関連の深い課題となっています。特に炉内機器であるブランケットセグメント(BS)及びダイバータカセット(DC)(図9-21)は、高エネルギーの中性子にさらされることから数年おきの交換が必要になります。これら放射化した交換機器は核融合炉で発生する低レベル放射性廃棄物の大半を占めるとともに、運転開始後の早期から廃棄物の管理に取り組まねばなりません。したがって、定期保守時に発生する廃棄物の安全な管理方策と減容化対策は社会受容性向上のために重要です。
図9-22に核融合出力が1.35 GW(参考ケース)での定期保守時に発生する放射性廃棄物の管理シナリオを示します。プラント稼働率を高くするには炉停止後速やかに炉内機器の交換作業を開始すべきですが、機器交換のためには冷却配管を切断する必要があります。早期の交換作業は残留熱による炉内機器の大きな温度上昇を招き、最終的に機器の熱変形や吸蔵トリチウム放出・拡散に至るおそれがあります。すなわち、保守時の安全と稼働率とはトレードオフ関係にあります。このことから、炉内機器の残留熱に基づく熱解析の結果、炉停止後1〜2週間は真空容器を高温に保ち、炉内機器から吸着トリチウムの脱ガス処理を行い、その後室温程度まで降温して炉停止1ヶ月後に保守を開始すれば、比較的容易な強制ガス冷却で保守期間中の残留熱の除去が可能であることが分かりました。このように、核融合炉で発生する放射性廃棄物の核特性に基づき、放射化機器の解体・処分までの時系列を追い、これまでにない廃棄物管理シナリオを構築しました(図9-22)。
図9-23に運転期間を20年と仮定して評価した総廃棄物量に対して、核融合出力変化時でのリサイクルに伴う減容化効果を示します。減容化を目指して中性子損傷が小さい構造体(バックプレート及びカセットボディ:図9-21)の再利用とブランケットモジュール内に充てんする希少金属であるベリリウム等のリサイクルを検討した結果、出力に依存せずに総廃棄物量を20%まで低減できることを明らかにしました。この結果は、商業炉を見据えた核融合炉開発において重要であり、廃棄物の減容化に向けて再利用/リサイクル工程の具体化を進めていきます。