図9-24 回転電極法によるベリライド微小球製造法を確立
図9-25 3元系ベリライド微小球製造に成功
図9-26 各試料の特性比較
核融合炉燃料のトリチウムは核融合反応で生じる中性子をリチウム(Li)に当てて生産します。このとき、より効率良く燃料を生産するために中性子の数を増やす中性子増倍材が不可欠です。候補材であるベリリウム(Be)は、冷却水漏えい時に水と接触して生じる水素が安全上問題になるなどの欠点があることから、より安定なBe金属間化合物(ベリライド)の製造技術開発をBA活動の一環として進めています。
Be原料は表面が酸化しやすいため、従来の粉末冶金法では脆くて加工が困難なベリライドしか得られませんでした。そこで、原料粉末表面を放電で清浄にした後合成するプラズマ焼結法に着目し、合成条件の最適化を図った結果、加工性や耐熱衝撃性に優れ、造粒原料として最適な棒状のベリライド製造に成功しました。そして、このベリライドを原料とする電極棒を用いた回転電極法によって核融合炉で使用する目標形状である直径1 mmのベリライド微小球製造に世界で初めて成功し、製造基盤技術を確立しました(図9-24)。ベリライドは、Beに比べて融点が高く、高温でも安定であることから、先進中性子増倍材として有望である結果が得られています。
しかしながら、当初Be12Ti組成の微小球を製造しましたが、造粒の際の再溶融時に組成が変化し、Be相が残り、単相化のための熱処理を要するなどの問題がありました。そこで、次に再溶融時に組成が変化しないベリライドとしてBe12Vを選定して試作した結果、Be12V単相微小球を直接造粒することに成功しました。
中性子増倍材の球は大量に装荷されることから、より高い強度が要求されますが、Be12V微小球の場合は球の圧壊強度の低下が認められました。この解決策としてBe-Ti-Vの3元系ベリライド微小球の製造技術開発に着手し、この圧壊強度を2元系と比べて約2倍向上することに成功しました。具体的には、組成比をパラメータにした造粒試験の結果、チタン(Ti)の割合が大きいとBe相が現れてしまいましたが、バナジウム(V)量を多く、すなわちTiとVの割合を、3対7から1対9と大きくすることによって、細かい粒径で形成されつつ、Be相を含まず、均質化処理が不要な3元系ベリライド微小球(Be12Ti0.3V0.7及びBe12Ti0.1V0.9: 図9-25)を直接造粒できることを明らかにしました。
そして、水素生成量及び圧壊強度を比較した結果、3元系ベリライドが最も低水素生成を示すV系ベリライドと同等(図9-26(a))で、高圧壊強度(図9-26(b))であることが明らかになり、優れた性能を有する新たな3元系ベリライド微小球の製造に世界で初めて成功しました。