2-5 地震活動が地層処分に及ぼす影響を評価

−派生断層の成長が地層処分システム周辺の地下水流動に与える影響評価−

図2-12 派生断層(分岐断層及びバックスラスト)の成長を仮定した水理・地質構造モデル

図2-12 派生断層(分岐断層及びバックスラスト)の成長を仮定した水理・地質構造モデル

処分施設閉鎖時(0年)に処分施設より深い地下に分岐断層が伏在し(線)、その後の地震活動に伴い成長した分岐断層及びバックスラスト(---線)が将来処分坑道を直撃する場合を想定しました。

 

図2-13 分岐断層と交差する処分坑道(深度300 m)からの移行経路

図2-13 分岐断層と交差する処分坑道(深度300 m)からの移行経路

分岐断層の成長によって、処分坑道中央(線)及び上流部(線)からの移行経路は断層に沿って上昇する経路に変化しました。

 

図2-14 処分坑道から地表到達までの平均流速(断層成長量:鉛直方向に500 m/1回の地震活動の場合)

図2-14 処分坑道から地表到達までの平均流速(断層成長量:鉛直方向に500 m/1回の地震活動の場合)

分岐断層の成長に伴い、処分坑道から地表到達までの平均流速は最大2桁増加しました。

 


長寿命核種を含む高レベル放射性廃棄物の地層処分では、処分後数十万年先まで安全性を評価する必要があり、その間に処分施設に著しい影響を与え得る地質・気候関連事象は立地選定時に回避することが求められています。しかし数十万年先の将来予測の困難さから、事前に回避しきれない事象の存在が指摘されています。例えば地震活動に関しては活断層を回避することとなっていますが、地下深部における活断層からの分岐断層や、その共役系として分岐断層と逆向きの傾斜で形成されるバックスラストは予測や検出が困難なため事前に回避できない可能性が指摘されています。そこで、派生断層(分岐断層及びバックスラスト)の成長に対する影響手法の整備及び処分施設周辺の地下水流動への影響評価を行いました。

派生断層のモデル化のために国内の派生断層事例を調査し、派生断層の成長角度及び1回の地震活動あたりの成長量を設定しました。これに基づき仮想的な堆積岩サイトにおいて派生断層の成長を仮定した水理・地質構造モデルを作成し(図2-12)、断層の成長を考慮した非定常二次元地下水流動解析を行いました。さらに派生断層との交差位置に仮定した幅1 kmの処分坑道(断層に対し上流・中央・下流の三つの領域に区分)に対し粒子追跡線解析(始点各200点)を行い、粒子放出時刻を変えて処分坑道から放出された粒子の移行経路及び移行時間を求めました。その結果から、派生断層成長に伴う天然バリアへの重要な影響として「核種移行経路の変化」と「平均流速の変化」の二つが分かりました。

処分坑道中央及び上流部からの移行経路については、分岐断層の成長に伴い断層に沿って上昇する経路に変化しました(図2-13)。また処分坑道から放出された粒子が地表に到達するまでの平均流速については、分岐断層の成長に伴い坑道中央で最大2桁、上流部で最大1桁程度増加しました(図2-14)。これは断層成長に伴い核種の地表への移行時間が短縮する可能性を示唆しています。

さらに、バックスラストについては断層に沿った下向きの地下水流速がバックスラストの成長に伴い1桁程度増加することも分かりました。これは断層成長に伴い地表付近の酸化性地下水の流入が起こり、各バリア材の安全機能に影響を及ぼす可能性を示唆しています。

本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託研究「平成26年度地層処分の安全審査に向けた評価手法の整備」の成果の一部です。