図8-24 グローブボックスとINVS、測定系の配置
図8-25 グローブボックスとINVS(遮へい体有り)の配置状況
東海再処理施設では、軽水炉等から回収された硝酸プルトニウム溶液を保有しています。これらは直接利用核物質(そのまま核爆発装置の製造に使用できる核物質)と呼ばれ、国及び国際原子力機関(IAEA)による査察を受けています。
在庫サンプル測定装置(INVentory sample assay System:INVS)は、混合酸化物(MOX)粉末、硝酸プルトニウム溶液等の試料に対し、中性子非破壊測定によりプルトニウム量を求める装置(図8-24)で、査察官が私たちの申告が正しいことを確認する手段として運用されてきましたが、今般、破壊分析と同等レベルの不確かさ(1%以下)を目標とし、プルトニウム溶液試料測定の高精度化に取り組みました。
高精度化にあたっては、まず検出器固有のパラメータ(感度分布や電圧特性など)を確認し、また測定対象と同じプルトニウムを中性子線源とできるMOXペレット線源を製造した上で、校正に必要なパラメータ(検出効率、自己増倍が無い場合の同時中性子の割合など)の確認及び最適化を行いました。
次に、保有する溶液の濃度範囲で調製した試料を用いて、検量線による方法、known-α法に必要なそれぞれの校正式を得ました。
実試料の測定結果は、3種類の中性子同時計数法(核分裂等により同時に発生した複数の中性子を検出する手法)、すなわち検量線による方法、known-α法(中性子の自己増倍率を既知とする方法)、マルチプリシティ法(三重相関の同時中性子を評価に用いる方法)によって評価、比較することで最適な評価方法を決定する方針としました。溶液系に対するknown-α法及びマルチプリシティ法の適用例は珍しく、新規の知見が得られる期待がありました。
実試料を約1日間測定し、評価したところ、検量線による方法とknown-α法は不確かさ1%以下を達成しましたが、マルチプリシティ法は約2%でした。不確かさを改善するため、バックグラウンド中性子の変化による影響を抑える遮へい体を導入したところ(図8-25)、特にknown-α法で大きな改善が見られ、検量線による方法とknown-α法では1時間という短い測定時間でも、不確かさ1%を達成することができました。結果として、マルチプリシティ法では不確かさ1%の達成は困難だったものの、検量線による方法及びknown-α法では、迅速かつ高精度な測定の両立を達成しました。
本研究は、米国ロスアラモス国立研究所との共同研究として計量管理の高度化のために実施したものです。