図8-4 トレンチ埋設施設からウランが浸出するイメージ
図8-5 検討中の埋設施設の配置と地下水の流れる方向
図8-6 P埋設及びS埋設から浸出したウランの地下水中濃度の経時変化
埋設事業センターは、研究施設等廃棄物のための埋設施設の設計を検討しています。廃棄物中には人に対して化学毒性を有する放射性核種も存在します。その一つがウランで、研究施設等廃棄物にはウランを多く含むものがあり、処分方法としてトレンチ埋設が検討されています。
そこで、埋設施設の規制には、一般公衆に対する被ばく線量評価が要求されていますが、より安全な埋設施設を目指し、これまで実施してこなかったウランの環境基準*に対する評価について、概念設計で設計したトレンチ埋設施設を参照して検討しました。
概念設計では、トレンチ埋設施設は「P埋設」と「S埋設」の二つの配置を併設することを計画しました。トレンチ埋設施設の安全を評価する際には、図8-4のように、降雨によりトレンチ埋設施設に水が浸入し、放射性核種が水に溶解して施設の外へ移行する可能性を考慮します。図8-5のとおり、二つの施設は互いに垂直になるように配置されているため、地下を流れる地下水の距離が異なります。今回は、それぞれの施設からウランが浸出することを想定し、解析コードGSA-GCL2を用いて、施設の端から1 mの地点における地下水中の濃度を評価しました。また、埋設するウランの量は、規則で定められている最大の濃度から算出し、ウランが移行するパラメータ(分配係数等)は従来の線量評価で使用した値と同じとしました。
評価した結果を図8-6に示します。浸出したウランの最大濃度がS埋設はP埋設の半分以下まで低くなり、濃度が最大となる時間がS施設はP施設の1000年より早い300年となることが分かりました。また、図8-4のような遮水工を取り入れた設計の場合では、最大の濃度となる時間に変化はほとんどありませんでしたが、ウランの最大濃度が10分の1以下まで低くなることが分かりました。日本ではウランの環境基準*を0.002 mg/Lと定めていますが、環境基準*を超えていたP埋設においても基準を下回りました。
これらの結果より、施設の配置を変えたり、遮水工を設置したりすることで環境基準*を満足させることが可能であると考えられます。しかし、施設には遮水工等の人工物を用いるため、ウランの濃度が最大となる時期が長期経過後と想定される場合は、劣化等を留意する必要があると考えられます。この結果は、今後のトレンチ埋設施設の設計を検討するための重要な知見となります。
(小川 理那)
* 公共用水域の水質汚濁に係る環境基準のうち、人の健康保護に関する環境基準(要監視項目)、水道法に基づく水質管理目標値(水質管理上留意すべき項目)