図1 試験の様子
図2 試験の結果(換算係数と警報発報の確率の関係)
原子力災害時、全ての避難車両はタイヤとワイパー部の汚染検査を受けます。しかし、箇所別に検査すると長時間を要し、検査会場が混雑します。そこで、可搬型の車両用ゲート型測定器(以下、ゲートモニタ)で同時に検査できれば、検査の迅速化につながります。本研究では、除染を講じる基準(GM管式サーベイメータで40 kcpmの計数率)に基づき、タイヤの汚染を判別できるゲートモニタで、ワイパー部の汚染が判別可能か調査しました。
調査ではまず、汚染の模擬として災害時の主要測定核種であるヨウ素131(131I)とガンマ線エネルギーが近いバリウム133(133Ba)線源をタイヤまたはワイパー部に取り付けて走行させ、ゲートモニタで線源からのガンマ線の計数率を測定しました(図1)。原子力規制庁が平成29年に示した「原子力災害時における避難退域時検査及び簡易除染マニュアル」では、タイヤ接地面を測定対象としていますが、接地面に線源を取り付けて走行させることは困難です。そこで、線源をフェンダーに取り付けて走行時の計数率を測定し、これに車両を静止させた状態でタイヤ接地面またはフェンダーに線源を別々に取り付けた場合の計数率の比を乗じて、走行時のタイヤ接地面からの計数率を推定しました。続いて、次式を用いてGM管式サーベイメータ相当の計数率(GM換算値)に換算しました。
GM換算値 = 計数率×換算係数
最後に、換算係数を変数としてGM換算値を求め、タイヤ接地面とワイパー部の警報発報の確率を算出しました。このとき、タイヤとワイパー部の汚染からの計数率は弁別できないため、同じ換算係数を用いてGM換算値を算出しました。
汚染がGM換算値で40 kcpm相当の場合に高確率で警報発報し、それ未満であれば誤って発報する確率を低く抑えることが要求されます。図2の試験結果から、タイヤ接地面の汚染に対しては換算係数を4に設定することで基準を超えているか否かを判別できる一方、この設定ではワイパー部に基準を超える汚染があっても警報発報の確率が10%未満になることが分かりました。この原因として、ワイパー部は検出器からの距離がタイヤよりも遠くなることが考えられます。
以上、測定試験を通じてゲートモニタによる汚染検知の性能を示すとともに、タイヤに加えワイパー部の汚染も判別するためのシステム構成及びデータ処理方法の課題を明らかにしました。今後もゲートモニタによるタイヤとワイパー部の同時検査の実現を目指した研究開発を進めていきます。
本成果は、内閣府の受託研究「平成31年度原子力防災研究事業」及び「令和2年度原子力防災研究事業」の成果の一部を含みます。
(平岡 大和)