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私たちは放射光X線のもつ(1)エネルギー可変性や(2)直線偏光性を使って、固体表面で起こるX線励起化学反応の研究を行ってきました。
物質に照射される光子エネルギーが物質の電子軌道のエネルギー準位に等しくなったとき、光吸収確率が非常に大きくなります。この現象は共鳴吸収または共鳴励起と言われています。共鳴励起ではある特定の方向性をもった分子軌道への電子遷移が起こるため、光の電場ベクトル(E)方向に特定の分子軸がそろったとき、光吸収確率が最大になります。私たちはこのことを利用して様々な方向を向いた分子群の中で特定の方向を向いた分子集団だけを励起し、化学反応を引き起こすことができるのではないかと考えました(図4-15(a))。 このような実験を行うために、私たちは図4-15(b)の様な実験システムを開発しました。これはパルスX線励起により化学反応を引き起こし、生じた反応生成物の放出方向を様々な角度で検出することのできる飛行時間型質量分析計を搭載した世界的に見てもユニークな装置です。この装置を使って調べた一例として、ギ酸固体試料を使って行った結果を図4-16に示します。励起される分子のC-H結合の方向が試料面に対して水平方向から垂直方向へ変わるにしたがって結合解裂の反応確率が増加することが見い出されました。すなわち、固体表面上の分子の化学反応性が分子の向きによって異なることが発見されました。 |
参考文献
T. Sekiguchi et al., Orientation-Selective Excitation and Dissociation in Multilayer Benzene, Appl. Surf. Sci., 169-170, 287 (2001). |
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