図12-7 HTTRの燃料
図12-8 HTTR燃料温度評価モデルの改良
図12-9 燃料最高温度評価結果
高温ガス炉は、その固有の安全性と水素製造等の多目的熱利用や高効率発電等の特徴から、次世代原子炉型の1つとして挙げられており、世界的に注目されています。原子力機構のHTTR(高温工学試験研究炉)は、我が国初の高温ガス炉として建設され、2004年4月に世界最高となる原子炉出口冷却材温度950 ℃を達成しました。HTTRでは、ウラン燃料をセラミックスで4重に被覆した被覆燃料粒子が用いられており、このFPの閉じ込め機能を確保する(燃料の健全性)ために、「通常運転時の燃料最高温度は1495 ℃以下」としています。(図12-7)
従来の燃料温度評価では、燃料最高温度は約1463 ℃と評価されていました。しかし、従来の燃料温度評価では燃料の健全性を確実に担保するために、様々な工学的安全係数を用いて燃料最高温度のみが保守的に評価できるようにしていました。このため、従来は詳細な燃料温度分布を得ることができませんでした。そこで、今回、より現実的かつ詳細な燃料温度を得るために、新たにHTTRの燃料温度評価モデルを開発しました。(図12-8)従来のモデルでは1燃料体を6分割し、その中で最も温度が高くなる燃料棒についてのみ評価していましたが、新たに開発した改良モデルでは、炉心全体に配置されている燃料棒を1本ごとに表現しており、燃料棒すべての温度評価を行うことが可能となりました。また、従来モデルでは、1/6ブロック中の燃料最高温度のみを算出するための工学的安全係数を考慮していましたが、改良モデルでは、現実的な燃料温度を評価するために、この工学的安全係数を削除しました。
この改良モデルを用いて燃料温度の評価を行った結果、燃料最高温度は約1428 ℃と評価され、従来モデルで評価されていた燃料最高温度約1463 ℃より約35 ℃低くなる結果となりました。(図12-9)
本モデルにより、現実的かつ詳細な燃料温度が評価可能となり、高出力の高温ガス炉設計が可能となります。したがって、実用高温ガス炉の経済性向上に貢献するものと期待されます。今後は、本手法の高精度化を目指して更なる改良を行っていきます。