図12-13 JMTR炉心解析のための計算モデル
図12-14 トリチウムモニタとトリチウムモニタ測定装置
近年のIASCCに代表される軽水炉構造材の経年変化に関する研究、核融合炉で使用するブランケット材料のトリチウム放出特性に関する研究等の先進的な照射研究等における材料試験炉を用いた中性子照射試験では、中性子照射量のみならずガンマ線量、ヘリウム、水素等の核変換生成物の生成量等の種々の照射パラメータに関して正確な予測、制御や評価が必要とされています。
そのため、材料試験炉JMTRにおいては、炉心を3次元でモデル化(図12-13)し、連続エネルギーモンテカルロコード(MCNP)により解析評価を行うことにより、実際に照射試験を行う前に照射パラメータの精度の高い予測を行い、照射試験後は、得られた中性子照射量の測定データ等を用いて解析データの妥当性を評価する手法の検討をしてきました。
中性子照射量については、照射試料と同時に照射された中性子照射量測定用モニタ(鉄及びコバルトのワイヤ)の放射化量の測定結果から、ガンマ線量については、JMTR炉内の核加熱(炉内の中性子、γ線との相互作用により発熱すること)を測定するための特殊な照射キャプセルを開発し、これを用いて核発熱により測定することにより、解析による評価の精度を明らかにしてきました。これまでの結果から、高速中性子照射量に対しては±10 %程度、熱中性子照射量では±30%程度で解析評価が可能となっています。また、ガンマ線量についても核加熱率の測定結果から−3〜+14 %程度で評価できることを確認しました。
核変換生成物の生成量については、中性子のエネルギースペクトル等に依存するため、個々に評価精度を確認する必要があります。今回は中性子照射により材料中に生成したトリチウムについて、専用に開発したトリチウム測定用モニタをJMTRで照射し、その後、専用に開発した測定装置を用いて、トリチウム生成量の測定(図12-14)を行いました。その測定結果と本解析手法により解析した結果を比較した結果、トリチウムの生成量は−1〜+8 %程度で解析評価できることが分かりました。この成果は、核融合ブランケット材料の研究開発に役立てられています。
今後も、先進的な照射試験研究に対応するため、必要とされる照射パラメータの評価のための技術開発を行っていく予定です。