図12-19 むつ事業所に設置してある加速器質量分析装置(AMS)
図12-20 飛行時間型検出器で測定した129Iスペクトル
図12-21 直線性の確認試験
ヨウ素129(129I)は半減期1570万年の長寿命放射性核種であり、使用済核燃料再処理施設から放出されます。129Iは原子力施設周辺でモニタリングが必要な核種であると同時に、その半減期が長いため海洋等の水循環のトレーサーや地球環境における物質移行挙動の解明に使用できる有用な核種の一つです。文部科学省刊行の「ヨウ素−129分析法」によれば129Iの測定方法は中性子放射化分析法を推奨していますが、この方法では検出限界がヨウ素同位体比(129I/127I )で10−9から10−10と高くまた測定に数日を要し更に数十%の誤差があるため、モニタリングには適しているものの環境レベルの試料(10−10〜10−12)の測定には不十分でした。そこでむつ事業所に設置してある加速器質量分析装置(図12-19)を用いて、129Iを短時間で高精度かつ高感度で測定する方法を確立しました。
129I5+(m/e=25.8)を質量分析する際、質量対電荷比の近い103Rh4+(m/e=25.75)や52Cr2+(m/e=26.0)が妨害となりますが、質量分解能の高い分析電磁石、エネルギー分解能の高い静電ディフレクター及び飛行時間型の検出器を採用し最適化することにより、質量分解能力を高めこれらの妨害イオンの影響を除去することに成功しました(図12-20)。また測定用ターゲット試料の電気伝導度を高めるためNb粉末と十分混合することにより、安定したイオンビームが得られ、安定した測定が可能となりました。
標準試料を用いた測定結果では129I/127Iが10−10〜10−12の範囲では約60分の測定で数%の誤差で高精度に測定でき、推奨値と測定値の間に良い直線関係があることを確認しました(図12-21)。また市販のヨウ化銀試薬を用いて検出限界を確認した結果、129I/127Iで10−14程度まで測定可能であることが分かりました。
この技術は単に原子力施設周辺のモニタリングを簡便化したのみならず、129Iを使うことにより地球環境における物質の移行を解明できる可能性があります。