1-14 パソコンを用い実時間の1000倍の速度で解析評価

−汎用プラントシミュレーションコードの検証−

図1-35 50 MW蒸気発生器内部の温度分布

定格出力での蒸気発生器ナトリウム温度(シェル側)と伝熱管内部の水・蒸気温度計測値を、NETFLOWコードのモデルを用いて解析したものです。蒸発器における沸騰挙動などを含め、現象を良くトレースしています。

図1-36 「もんじゅ」45 %熱出力からのタービントリップ試験

「もんじゅ」の1次系から3次系1ループ分をNETFLOWでモデル化し、以前行われたタービントリップ試験について解析しました。1次系と2次系の主要なパラメータの解析結果を図に示します。NETFLOWコードによる解析結果は、試験結果と良い一致を見せています。10000秒に亘る過渡変化について、原子炉スクラム後の挙動をほぼ再現することができました。

NETFLOWコードは、原子炉の補機冷却系等などの複雑な流路体系を手軽に高速で解析できるようにする目的で開発され、これまでにポンプ、熱交換器、配管、流量調節弁などのコンポーネントや軽水炉体系を模擬した実験装置の流動体系や原子炉そのもので収集されたデータを用いて精度検証を行い、良好な適用性を確認してきました。

本コードをより汎用的に利用できるようにするため、各種液体金属高速炉へも適用できるようにする改良を行うと共に、液体ナトリウムを用いた施設の試験で得られた結果への適用性検証を行いました。対象とした施設は、50 MW蒸気発生器(SG)施設と、高速増殖炉「もんじゅ」です。高速炉の蒸気発生器は、軽水炉とは異なった形状と特性を有しているため、重要機器の一つとして検証しておく必要がありました。50 MWSG施設で過去に収集された運転データを、解析コードの機能を使って解析したところ、蒸発器、過熱器の内部の温度分布について沸騰挙動を含めて正しく予測することができました。また、「もんじゅ」の炉心、1次系、2次系、蒸気発生器を含む3次系1ループ分を解析のモデルとしてプラントの挙動を解析しました。選択した事象は、ポンプ入熱による24時間の2次系自然循環試験と45 %熱出力におけるタービントリップ試験です。自然循環試験では、2次系に設置された空気冷却器を用いて、1次側で入力された熱を除去しており、フィンを有する伝熱管群からの強制循環及び自然循環熱伝達挙動の解析検証が主題でした。これらの解析結果は、試験結果と良い一致を示し、解析コードがナトリウム冷却炉の体系にも適用できるとの見通しが得られました。

本コードの特徴の一つである高速性は、解析において発揮され、「もんじゅ」の1次系から3次系の1ループ分をそのまま模擬した複雑な体系で、約2 GHzの通常のパソコンを用いて1000秒の事象を約1秒で解析することが確認できました。このため、数日に及ぶ長期間の運転に対しても手軽に解析が行え、24時間の「もんじゅ」2次系自然循環試験に対しては、2分以内に結果が得られました。

本コードは、現時点では軽水、重水、各種液体金属冷却の体系で使用できるため、大学院での研究や教育用に用いて、原子力技術者の資質向上に役立てる計画としています。なお、液体の物性などについて該当する部分を修正すれば、化学プラントなどでも利用することが可能になります。