表2-1 吹付け試験を行ったコンクリートの配合
図2-6 模擬トンネルを用いた吹付け試験の様子
図2-7 吹付けコアの強度
高レベル放射性廃棄物の地層処分場は、地下数百メートル以深の岩盤内に建設されることから、処分施設の操業期間中に周辺岩盤の力学的な安定を確保するため、セメント系材料による支保工が設置されることが考えられます。しかしながら、通常、土木・建築の分野で幅広く用いられている普通ポルトランドセメントを支保工として用いた場合、処分施設周辺がpH12.5以上のアルカリ性となり周囲の岩盤や緩衝材の長期挙動に影響を及ぼすことが考えられます。このため、浸出液のpHがより低いセメントとしてフライアッシュを高含有したシリカフュームセメント(Highly Flyash Contained Silicafume Cement)(以下、「HFSC」という)の開発を行ってきており、その施工性を実証するために幌延の深地層研究施設の坑道の一部を利用してHFSCの原位置施工試験を行う計画です。本研究においては、幌延での原位置施工試験に先立ち、支保工の施工方法として吹付けコンクリートを対象にHFSCを用いたコンクリートの配合を検討すると共に、その施工方法について評価を行いました。幌延深地層研究施設における支保工の設計基準強度には28日材齢において36 N/mm2が求められており、この強度を満足するコンクリートの配合を検討しました。急結剤添加前のベースコンクリートとして、普通ポルトランドセメントを用いる場合には水セメント比を0.4、早強ポルトランドセメントを用いる場合には水セメント比0.45とすることにより、設計強度を満足する可能性のある2つの配合を選定(表2-1)しました。これらの選定した配合について、急結剤を用いて模擬トンネル構造物に対して吹付け試験(図2-6)を行いました。その結果、従来吹付けコンクリートの施工性の観点から水セメント比は0.5程度が限界でしたがHFSCにおいては水セメント比0.45及び0.4共に施工性は良好で、吹付けコンクリート表層部(数cm)では空隙が多く認められましたが、それより内部はほぼ一定の単位体積質量でした。また、両配合の吹付けコンクリートのコアの平均強度は、28日材齢において48 N/mm2 程度(図2-7)あり、支保工の設計基準強度を上回る高強度吹付けコンクリートでした。