図2-8 熱‐水‐応力‐化学連成挙動の模式図
図2-9 熱‐水‐応力‐化学連成解析コードの概要
図2-10 開発した解析コードによる解析結果の例
高レベル放射性廃棄物地層処分において、人工バリア定置後の廃棄体周辺では、ガラス固化体の発熱、周辺岩盤から人工バリアへの地下水の浸潤、地下水浸潤による緩衝材の膨潤圧の発生、緩衝材/間隙水化学の変化など、熱的、水理学的、力学的、化学的なプロセスが相互に影響を及ぼしあいます(図2-8)。これらの現象を定量的に捉えることは人工バリアの長期にわたる健全性評価の信頼性を向上する上で大変重要であり、これに資するために、私たちは熱‐水‐応力‐化学連成モデル/コードの開発を進めています。この解析コードは、熱‐水‐応力連成解析コードTHAMES、物質移行解析コードDtransu、地球化学解析コードPHREEQCの3つの既存の解析コードを制御するプロセス管理プログラムと、各解析コード間で連成対象変数の受け渡しを行う共有メモリ管理プログラムを用いて、熱‐水‐応力‐化学連成解析を行うものです(図2-9)。このように、既存の解析コードを組み合わせるという方法を採用することで、機能の追加や解析コードの更新に柔軟に対応できるシステムとしています。私たちは熱‐水‐応力‐化学連成現象の理解と開発したモデルの検証を目的として、国際共同研究プロジェクト(DECOVALEX)に参画しています。このプロジェクトにおいて、米国ユッカマウンテン処分場での原位置試験を対象に、私たちで開発した熱‐水‐応力‐化学連成解析コードを用いて実施した解析結果を示します(図2-10)。このように、この解析コードを用いて、人工バリアのみでなく坑道周辺の空間的、時間的変遷を定量的に捉えることが可能となります。今後も、現在の連成モデルに新たな知見や精緻なモデルを取り入れ一層の高度化を図り、より現実的な予測を目指していきます。