2-6 高レベル廃棄物地層処分の性能評価研究の進め方

−事業段階における、総合的な性能評価体系の構築・整備に向けて−

図2-11 高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価研究の要素技術と各事業段階での性能評価研究の進め方
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図2-11 高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価研究の要素技術と各事業段階での性能評価研究の進め方


本内容は、高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価に関する研究を対象として、これまでの研究開発成果を踏まえ、今後5年を目途に実施すべき研究の項目とその内容等を研究計画書としてまとめたものです。

事業段階にある高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価研究に求められるニーズとしては、事業の進展や規制の検討に資するよう総合的な評価体系・手法として成果を取りまとめ、知識ベースに反映することが挙げられます。そのため、性能評価研究においては、事業者が対象とする可能性のある多様な地質環境や、それに対応させた地層処分システムに適用できる柔軟性を有する評価体系の提示に向けて、以下を目指した研究開発が求められています。

◆ある地質環境条件が与えられた場合や、地質環境調査の進展に伴い利用可能になる地質環境条件の情報や、現象理解等の進展へ柔軟に対応できる評価体系の整備

本計画書では、上記のニーズを念頭に、高レベル放射性廃棄物地層処分に関する国の基盤的研究開発を対象に、体系的かつ中長期的にまとめられた研究開発計画である「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発全体マップ」の性能評価分野の研究項目の枠組みを参考とし、原子力機構の「中期計画」を踏まえ、原子力安全委員会の「日本原子力研究開発機構に期待する安全研究」を勘案しました。また、“我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性−地層処分研究開発第2次取りまとめ(1999年公開)”に加え、“高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築(H17レポート:2005年公開)”におけるこれまでの研究開発によって示された課題へ取り組むため、今後の5年程度(2010年度頃まで)を目途に実施すべき研究項目とその内容等を記述しました。

対象とする研究項目としては、評価手法の整備として、シナリオ解析技術、不確実性評価技術、総合的な性能評価技術、個別現象の評価技術(地下水・間隙水水質形成評価技術、核種溶解・沈殿評価技術、コロイド・有機物・微生物影響評価技術、水理・物質移行評価技術、生物圏での核種移行/被ばく評価技術)、並びにデータベース開発(熱力学データベース、収着・拡散データベース)の整備を挙げました。

例えば、総合的な性能評価技術では、地質環境条件に見合う適切なスケール区分や設計オプションの選択に応じ柔軟に全体モデルチェーンやパラメータを設定・変更し、総合的な性能評価にかかわる一連の作業を品質を確保しつつ行うための技術的な手引きとして取りまとめることができるように、計画を作成しました。

今後5ヵ年、これらの研究項目に関する研究を通じて、事業段階の進展に応じて得られる地質環境情報を想定し、地下研究施設から得られる実際の地質環境情報を活用しつつ、事業の進展や規制の検討に資する体系化された情報、知識を導出するため、柔軟性、網羅性を有し、品質保証された高レベル放射性廃棄物処分の性能評価体系・手法を開発すると共に成果の公開を進めていく予定です。


●参考文献
宮原要ほか, 高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価に関する研究計画書, 2006, JAEA-Review 2006-015, 29p.