図2-12 鳴子火山周辺の比抵抗断面図
図2-13 紀伊半島南部の比抵抗断面図
高レベル放射性廃棄物の地層処分を行う際には、将来のマグマの貫入又は噴出による処分施設及び廃棄体の直接的な破損等のリスクを回避する必要があります。また、日本には多くの活火山があり、その地下深くには高温のマグマがあると考えられています。このようなマグマがある場所を地層処分のサイト選定においてあらかじめ特定する方法を開発するため、国内でも有数の火山・地熱地帯である宮城県の鳴子火山を対象として地磁気・地電流の観測を行いました。
その結果、これまで詳細な地下の構造が明らかにされていなかった鳴子火山の地下10 kmよりも深い場所に、電気の流れやすい領域(低比抵抗体:図2-12黄〜赤色部分)が検出されました。一般に、低比抵抗体はマグマや水などの流体の存在を表します。また、マグマのように非常に高温な物質の内部では発生しない微小地震(図中の○)が、その低比抵抗体を避けるように発生していることからも、これがマグマであることが分かります。このように、地磁気・地電流の観測を行うことによって、地下深くにあるマグマや高温の流体を高精度で捉えることに成功しました。
日本の高温泉のほとんどは火山の周辺にみられ、地下のマグマによって温められた地下水が地表にもたらされていると考えられています。しかし、紀伊半島では近くに火山がないにもかかわらず湯の峰温泉(泉温92.5 ℃)や白浜温泉(泉温78 ℃)等の高温泉がみられます。この原因を解明するため、この地域で地磁気・地電流の観測を行いました。
その結果、低比抵抗層(図2-13赤色部分)が地下10〜15 kmに検出されました。鳴子火山とは異なり、マグマ中では発生しない微小地震(図中の○)が多く観測されることから、この低比抵抗層はマグマとは異なる流体であることが分かります。
更に、その下には流体の移動によって起こると考えられている低周波の地震(図中の★)が発生していることから、この低比抵抗層はフィリピン海プレートから脱水して上昇した流体が地下に溜まっている様子を写し出していると考えられます。また、高温泉は、それらの流体を媒体として運ばれてきた熱が地下水を温めたことによって生じたと解釈されます。
これらの研究は、地層処分のサイト選定においてあらかじめ地下深部のマグマ・高温流体等を調査する技術の開発の一環として行われたもので、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術として、最終処分事業や国の安全規制に反映される予定です。