3 核融合研究開発

3-1 核融合エネルギーの実用化に向けて

図3-1 核融合研究開発における3つの重要分野、 原子力機構は3分野全てで世界を牽引する世界で唯一の研究機関
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図3-1 核融合研究開発における3つの重要分野、
原子力機構は3分野全てで世界を牽引する世界で唯一の研究機関

図3-2 幅広いアプローチ活動
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図3-2 幅広いアプローチ活動

図3-3 21世紀中葉の実用化をめざした核融合研究開発の開発ステップ

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図3-3 21世紀中葉の実用化をめざした核融合研究開発の開発ステップ


核融合エネルギーは、燃料が偏在せず豊富であること、原理的には高い安全性を有し、発電の過程において地球温暖化、酸性雨等の地球環境問題の原因と考えられる物質を排出しないことなど、人類社会の恒久的な持続的発展を可能にし得る原子力エネルギーの一つです。私たちは、旧原研時代を含め44年間にわたって核融合に関する研究開発を進めてきており、図3-1に示すようにITER計画、炉心プラズマ研究、核融合工学研究という核融合開発の鍵となる3つの分野を一つの研究所で総合的に進めている世界で唯一の研究機関です。なおITER計画に加え、日欧共同の幅広い研究開発(幅広いアプローチ活動)等の国際協力を積極的に利用し、原型炉の実現を目指しています。

国際熱核融合実験炉(ITER)計画

大型トカマクの次段階装置である国際熱核融合実験炉ITERは、1985年11月の米ソ首脳会談が発端となり進められている国際協力で、その目的は、「核燃焼プラズマの制御、長時間燃焼の実現」、「核融合工学技術の統合試験」です。

ITERは、平成2005年6月にモスクワで開催された閣僚級会合において、フランスカダラッシュに建設されること、併せて、我が国が欧州と並び重要な役割を果たすことが決定されました。2005年12月にはインドの正式参加が決まり、このITER計画には日、欧、米、露、中、韓、インドの7極、世界人口の半数以上を占める国々が参加することとなりました。ITER国際事業体機構長予定者としては、元クロアチア大使の池田要氏が選出されており、事業体組織の基盤整備を進めています。2006年5月にはITERの実施協定が仮合意され、2006年度内の署名後、各極で批准手続きを行う予定であり、いよいよITER計画も建設段階となって行きます。我が国は、機器物納及び人的貢献において、ホストである欧州に次ぐ貢献が期待されていますが、原子力機構はITER計画における我が国の極内機関となることが想定され、このITER計画に重要な役割を果たすことになります。

炉心プラズマ研究

1985年に世界の3大トカマクの一つとして運転を開始した臨界プラズマ試験装置JT-60では、世界最高のイオン温度5.2億度、世界最高のエネルギー増倍率1.25の達成、熱の断熱層や電流ホールを発見する等、世界を主導する数多くの成果を挙げてきました。最近は、プラズマ圧力の高い状態を長時間維持する等のITERの長時間運転や核融合炉の発電コストの低減に貢献するための研究やプラズマの特性を解明するシミュレーション研究を進めています。

核融合工学研究

核融合エネルギーの利用を可能にするための様々な先端技術開発を行っており、ITERの建設に必要な大規模工学R&Dでは7つのR&D項目の内3つをホストしITERの建設基盤を構築しました。現在、増殖ブランケットや低放射化フェライト鋼の研究開発等を進めています。

幅広いアプローチ活動

ITER政府間協議の過程で、7極で進めるITER計画と並行して、日欧が等分に分担してITERと核融合原型炉に必要な幅広い研究開発(幅広いアプローチ)を実施することに合意しました。国内の専門家等の意見を参考に、図3-2に示す(1)計算機シミュレーション、遠隔実験、原型炉設計R&D調整等の研究開発を総合的に進める国際核融合エネルギー研究センター、(2)国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計、(3)サテライトトカマク研究を行うことが文部科学省により決定されました。これらの我が国の提案に関して、欧州と技術会合を重ね、活動内容、分担、実施の枠組みについて合意しました。現在、ITER協定と同じ時期に発効することを目指して、日欧核融合協力協定締結に向けて協議しているところです。原子力機構は幅広いアプローチ活動においても我が国の実施機関となることが想定されています。

これからの研究開発

ITER計画では10年の建設期間の後約20年の実験を行い、燃焼制御の実証、燃焼プラズマの定常運転の実現、更には核融合炉に必要な様々な工学技術を総合的に試験し、原型炉に必要な基礎基盤を構築します。一方、炉心プラズマ研究においては、幅広いアプローチ活動を最大限に活用し、ITER計画を先導する研究を進めると共に、核融合炉をよりコンパクト化するための高い核融合出力プラズマの定常運転法の確立を目指します。核融合工学研究では、原型炉の概念検討や核融合エネルギー利用に必要なR&Dを行い原型炉の概念を構築すると共に、材料照射施設の設計を通じて長寿命材料開発に見通しを得る予定です。このような、ITER計画を中心に、炉心プラズマから核融合工学研究開発を含む総合的な研究開発アプローチを行うことにより、21世紀中葉の核融合の実用化を目指します。