5-6 大型実験でPWRシビアアクシデント対策の効果を示す

−最も厳しい破断位置で有効性を検証−

図5-11 想定する各種冷却材喪失事故(LOCA)と安全対策

図5-11 想定する各種冷却材喪失事故(LOCA)と安全対策

110万kW級のPWRを同一高さ、容積比1/48で模擬する世界最大の実験装置を用い、実炉で起こすわけにはいかない各種LOCA実験を実施し、その際の安全対策の効果を明らかにしました。小破断LOCAが生じた場合に重要な安全対策は図の非常用炉心冷却系(ECCS)3種を注入することですが、特にHPIが全故障するような設計条件を超えた事態では、運転員はSG2次側逃がし弁(RV)で減圧してAISとLPIの注入を促し、炉心冷却の維持を図る等、シビアアクシデント防止対策が必要です。私たちは最も厳しい破断位置の原子炉容器底部小破断LOCA実験を実施し、AISからガスが流入して減圧阻害が生じた場合でも、この安全対策の有効性を検証しました。またLOCA解析コードでその効果を確認しました。

図5-12 原子炉底部小破断LOCAで急減圧方策が有効と確認

図5-12 原子炉底部小破断LOCAで急減圧方策が有効と確認

HPI全故障・ガス流入でも、急減圧で炉心冷却を維持しました。

図5-13 PWR/LOCA状態把握に有用なP-Mマップで効果を確認

図5-13 PWR/LOCA状態把握に有用なP-Mマップで効果を確認

この図で、減圧策の相違による2実験の保有水量の差が明瞭です。SP4実験では炉心露出条件より多い水量でLPIが作動しました。

世界の大半の原子力発電所は加圧水型原子炉(PWR)です。私たちのROSA-V計画では、大型実験装置(LSTF)を用いて、このPWRの様々な破断位置に関する小破断冷却材喪失事故(LOCA)模擬実験(図5-11)を行い、冷却材の挙動を解明すると共にそれらをLOCA解析コードの性能評価・改良に役立て、原子炉安全性向上に寄与してきています。

従来、シビアアクシデント防止策として行われるアクシデントマネジメント(AM)策の効果を検証する研究は、主として1次系ループ配管の小破断LOCAが中心でした。しかし最近、米国の South Texas Project 炉底部で計装管ノズル2本から洩れの兆候が見つかり、原子炉容器底部小破断が新たな安全上の課題として注目されると共に、原子力機構が主催して2005年度に開始した OECD/NEAROSA プロジェクトでも研究課題に採用され、参加国の関心を集めています。私たちはこれらに先駆けて計装管の小破断LOCAを想定し、AM策の有効性を検証するため、SG2次側減圧条件を変えた2実験を実施しました。破断面積は0.2 %低温側配管破断相当です。すなわち、ECCSの1つ高圧注入系(HPI)が全故障し、かつ蓄圧注入系(AIS)からカバーガスが流入してSG1次側に蓄積し、減圧が阻害されるという過酷な場合でも、定率(−55 K/h)で減圧したSP3実験では炉心過熱に至るものの、急減圧を行ったSP4実験では1次系圧力低下が早まり(図5-12)、炉心冷却を維持しました。

この結果を、図5-13の1次系圧力(P)と保有水量(M)のP-Mマップで表すと、減圧策によって保有水量に大きな相違が生じたことを明瞭に把握できます。すなわち、SP3実験では保有水量が炉心露出限界を下回ってしまったのに対し、SP4実験では水量を高く維持したまま低圧注入系(LPI)作動を達成したというAM策の効果が明瞭にわかります。

このように、PWRの1次系破断位置の中で最も厳しい原子炉底部における小破断LOCA時のAM策有効性を検証したことで、他の破断位置を含めた包括的な安全対策の有効性を示すことができました。またAM策に有用な運転員支援ツールであるP-Mマップ手法を開発しました。



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