図8-1 TVFガラス溶融炉の構造
表8-1 将来の燃料サイクルから発生する高レベル廃棄物に含まれる
白金族元素及びモリブデン量、並びに発熱量の試算
東海再処理工場から発生する高レベル放射性廃液は、図8-1に示すガラス溶融炉を主設備として有するTVF(Tokai Vitrification Facility)において、安定なガラス固化体に処理しています。TVFでは1995年のホット試験開始から2006年3月末までに218本のガラス固化体(キャニスタ:容量110リットル)を製造し、その間、加熱効率等に影響を及ぼす核分裂生成物中の白金族元素が溶融炉底部に堆積することを抑制するための「炉底低温運転」を用いた運転を行うとともに、完全遠隔による溶融炉の更新を行い、撤去した1号溶融炉を対象とした解体技術開発等を進めています。
核燃料サイクルの確立において、ガラス固化技術は枢要技術であり、一層の高度化並びに信頼性向上を図ることが重要です。このため、抜本的な白金族元素の堆積抑制及び流下促進を講じた炉底構造、炉壁等の侵食等を抑制する長寿命溶融炉、溶融炉内の様々な物理現象を連成させたシミュレーション技術の開発を進めると共に、ガラス中に含まれる廃棄物成分を現行の約25 %から30 %以上に増加させた「高減容化」研究を行っています。高減容化においては、核分裂生成物中のモリブデン等による水溶性固相の析出抑制が重要であり、ガラス中へのモリブデン溶解性に関する基礎試験に引き続き、実規模溶融炉を用いたコールド試験を進めています。
高燃焼度燃料や将来のプルサーマル並びにFBRサイクルから発生する高レベル放射性廃液の処理に対して、現行のガラス固化技術の適用性や現在進めている技術開発の役割を検討するため、各燃料サイクルから発生する高レベル放射性廃棄物について、ガラス固化の観点から重要な白金族元素及びモリブデン元素の組成、並びに貯蔵施設や将来の処分場の設計に影響を与えるガラス固化体の発熱量について評価を行いました。高燃焼度サイクルやプルサーマルサイクルについては現行再処理のフローシート、FBRサイクルに関してはFSフェーズIIにおける先進湿式再処理(NEXT)のフローシートを基に評価しています。
表8-1に示す試算結果より、将来の高燃焼度化による白金族元素及びモリブデン元素の組成、並びに発熱量への影響は数%以内と小さく、現行のガラス固化技術が十分適用できると考えられます。プルサーマル燃料サイクル及びFBRサイクルにおいては、白金族元素が6割程度増加することから、現在進めている白金族元素対策が一層重要となることが分かりました。更にプルサーマル燃料サイクルにおいては、アクチニド元素による発熱量の増大が顕著であり、NEXTの持つマイナーアクチニド元素の回収機能を再処理に適用することが示唆されます。また、各燃料サイクルともモリブデン量の増加は認められず、高減容化はいずれの燃料サイクルからの高レベル放射性廃棄物においても適用することが期待できます。