1-5 ガス巻き込み渦の内部構造に迫る

−レーザーを使った画像計測による気液界面と流速場の同時計測−

図1-13 液面に発生した渦によって発生したガス巻き込み

図1-13 液面に発生した渦によって発生したガス巻き込み

 

図1-14 レーザーを使用した速度計測システム

図1-14 レーザーを使用した速度計測システム

 

図1-15 レーザーを使った画像計測から得られた渦周辺の速度分布

図1-15 レーザーを使った画像計測から得られた渦周辺の速度分布

(a)(b)の各右上にある付属図は、計測時の渦の様子と計測位置を示しています。(a)を0秒とした場合 、 4.0秒後の(b)では渦が発達し回転する流速成分が大きくなり、くぼみがより深くなっていることが分かります。

FBR実用化に向けて、炉容器のコンパクト化や冷却系統の2ループ化等により、経済性向上を追及したナトリウム大型炉が検討されています。このうち、コンパクト化を行うと、これまでの設計例に比べ冷却材流速が増大することになるため、原子炉容器自由液面でのアルゴンカバーガスの巻き込みの発生防止が設計上の重要課題となっています。特に、図1-13に示すような、流体中に発生した渦によって液面が変形することにより気泡の巻き込みへとつながる、くぼみ渦によるガス巻き込み現象に関しては、発生条件等が明確になっていません。こうしたガス巻き込みに対する評価手法を確立するためには、その発生条件やくぼみの成長機構等を明らかにする必要があります。そこで、水流動実験を実施し、ガス巻き込み現象の基礎的なメカニズムを把握するために、渦内部の速度計測を行いました。

実際の原子炉で想定される渦は間欠的に発生し、成長、減衰すると考えられることから、渦周囲の速度分布を把握するため、図1-14に示すような、渦の可視化とレーザーを使用した粒子画像流速測定法による渦内部の速度計測を同時に実施するシステムを考案し、渦の発達段階に応じた速度分布の計測を実施しました。

その結果、図1-15に示すように、渦による液面のくぼみ形状とそれに対応した渦内部の速度分布が得られ、ガス巻き込み発生時に、渦周囲の循環とくぼみ深さの両者が相関を持って成長しくぼみ深さが循環に対して遅れて成長することなど、くぼみ渦の発達過程を明らかにしました。試験結果は解析評価手法の検証に用いるとともに、今後、更に詳細な発生条件や流速分布等を調べていき、ガス巻き込み防止の指針作成に役立てる予定です。