図1-10 「もんじゅ」炉心と集合体間熱移行モデル
図1-11 「常陽」自然循環時の集合体出口温度比較例(第3層)
図1-12 「もんじゅ」45%熱出力からの炉停止時の集合体出口温度比較
原子炉の主冷却系,補機冷却系などで構成された複雑な流路体系の動特性を手軽に精度良く高速で解析できるようにする目的でNETFLOWコードを開発し、これまでに軽水炉体系や「もんじゅ」の強制循環下の試験解析を通じて良好な解析精度を確認してきました。本コードは、既に大学院の学生に提供して教育に使用されています。
液体金属炉の自然循環条件下でも精度良く解析できるようにするため、集合体間で生じる熱輸送を考慮した解析を行うためのモデルを提案し、このモデルの妥当性を検証しました。高速炉の燃料集合体は六角形状であり、集合体の周りに存在する集合体6本との伝熱を、集合体の間に存在する液体金属の熱伝導と集合体の回りに生じる低速の流れ(インター・ラッパー・フロー)を考慮し、隣接集合体の熱通過の式を用いて解析するモデルです(図1-10)。原子炉は、炉中心部の温度が高く、周囲に向かって低下するのが普通です。このため、集合体1本1本を対象にした解析よりも、中心から外側に向かう層ごとに解析するのが現実的です。したがって、各層のドライバー燃料等を束ねた代表流路を10本程度考えて、その流路に隣接する燃料やブランケット燃料,制御棒,反射体などの種類と本数をマトリクスで構成された情報として解析コードに入力する方法で温度計算ができるようにする方法を考えました。結果は、図1-11,図1-12に示すとおりであり、アメリカで開発されたSSC-Lコードと同様に、燃料集合体出口の温度計測値を再現するものとなっています。このモデルによって、集合体出口温度が適切に解析できるようになり、多くの計算時間を要する三次元解析を行う前に温度挙動が高速で把握できるようになりました。このモデルは、本コードのみならず、一般の一次元動特性解析コードに適用可能なものです。