図2-7 天然現象が地質環境や処分場に与える影響を現実に即して把握する方法のイメージ(火山・熱水活動の例)
高レベル放射性廃棄物地層処分の安全性に影響を与える可能性のある天然現象について、それに起因する地質環境や処分場への多様な影響を現実に即して把握し、評価する技術を整備しました。
原子力機構(旧サイクル機構)が取りまとめた「地層処分研究開発第2次取りまとめ」では、処分の安全性に対する擾乱要因として天然現象(火山・熱水活動,地震・断層活動,隆起・侵食/気候・海水準変動)に起因する処分への影響を、保守的かつ簡略的な評価シナリオやモデルを構築して例示しました。これらの検討は、場所を特定しない段階のもので、処分場が被る影響の特徴を代表的に捉え、取り扱ったものでした。
現実的には発生する天然現象は多様であり、それに起因する影響も強弱を含め多様です。そのため、今後は、具体的な場所の選定に応じて明らかになる固有の特徴や条件に即した現象と影響を把握する必要があります。
そこで、私たちは、地球科学に関する事例研究の成果を反映して、天然現象の発生に伴う処分への影響を現実的に取り扱う評価シナリオやモデルを設定する手順を開発しました。具体的には、次の手順です(図2-7)。
Step1:どんな天然現象がどのように発生するかの記述
Step2:地質環境条件がどの程度変化するかの検討
Step3:地質環境条件の変化のパターン分類
Step4:評価シナリオ及びモデルの設定
Step5:影響解析の実施
この手順のうちStep1と2は、図2-7のとおり、天然現象を始めとする地球科学に関する事例研究の成果を活用します。また、Step2では、地質環境条件の変化を温度(T:地温など),水理(H:地下水流速など),力学(M:岩盤の物性など),化学(C:地下水の水質など)、すなわちTHMCで分類して把握し、整理します。Step3では、評価シナリオやモデルを設定しやすくするために、地質環境条件の変化をパターン分類します。最後に、Step4と5では、パターン分類した地質環境条件を用いて評価シナリオやモデルを作成し影響解析を実施します。
本検討により、地球科学に関する研究成果の適切な組込みができるようになり、今までよりも多様な天然現象とそれによる地質環境条件への影響を現実的かつ具体的な把握ができるようになりました。また、現象の発生から影響評価までの展開が明示され、より現実的な評価シナリオやモデルの構築ができるようになりました。更に、これらの検討を通じて提示される必要な知見・データの過不足や着目すべき点などの情報についてTHMCを介して地球科学に関する研究にフィードバックすることにより、今後の研究計画の立案などに効果的に寄与することできると考えられます。