8-1 硝酸プルトニウム溶液の高精度測定の実現

-水晶振動型圧力計と密度チェックで高精度と信頼性を確保-

図8-2 貯槽の密度・液量測定

図8-2 貯槽の密度・液量測定

 

図8-3 液量監視データの一例

図8-3 液量監視データの一例

 

図8-4 溶液重量監視データの一例

図8-4 溶液重量監視データの一例


原子炉で使い終わった燃料は再処理工場で溶解され、再利用可能なウランとプルトニウムが硝酸溶液として回収されます。これを核燃料として再利用するためには酸化物粉末にしなければなりませんが、我が国では、核拡散抵抗性のある混合転換法(ウランとプルトニウムを溶液状態で混合し酸化物にするのでプルトニウム含有率の高い粉末が原理的に生じない)を採用するとともに、特にプルトニウムの計量管理を厳格に行っています。

ウランと混合する前の硝酸プルトニウム溶液は図8-2に示すような槽に貯蔵されており、先端まで空気が満たされた3本の管の背圧を二つの水晶振動型圧力計により精密に測定しています。メジャー管とマイナー管の圧力差ΔPD、メジャー管とリファレンス管の圧力差ΔPL及び液量Vは、密度ρTank,重力加速度g,液位H,メジャー管とマイナー管の長さの差Lg,貯槽の形状に応じたVとHの関数Fを用いて、以下の式で表されます。

・ΔPD=ρTank・g・Lg

・ΔPL=ρTank・g・H

・V=F(H)

Lg及びgは一定値であり、ΔPD及びΔPLの測定値からρTank,H及びVが求められます。なお、これらの式は測定原理を示したもので、管内の圧力分布等に対する補正が実際には行われます。この高精度の計量測定は溶液を静置した状態で行われます。得られた密度及び液量と、分析サンプルを採取して別の測定方法で得られた密度及びプルトニウム濃度から、温度差を補正してプルトニウム量が決定されます。双方の密度は温度差を補正すれば通常一致しますが、ずれが大きい時はどこかに誤差が入り込んだと考えて、測定の全部又は一部をやり直すことで万全を期しています。

一方、硝酸プルトニウム溶液は水の放射線分解により水素ガスを少しずつ発生するため、計量測定以外の時は、貯槽底部の配管から圧縮空気(水素掃気エア)を供給して水素ガスを貯槽外に排出しなければなりません。すると、溶液が撹拌されたり温度が変化したりして、液量が少し変化したように見えることがあります。密度に液量を乗じて得られる溶液重量の考えを導入すると、このような見かけの液量変化と本当の液量変化を区別できることを明らかにしました。

連続液量監視データの一例を図8-3に示します。水素掃気エアが止まるのは計量測定を行う時のごく短時間であり、連続監視時には水素掃気エアがΔPDの測定に影響を与え、測定値の変動及びプラスの測定バイアスが生じます。密度値の影響は測定の原理式に従い液位測定値に反映され、液量の変動及びマイナスの測定バイアス(〜0.2%)が確認されました。

一方、図8-3に示した期間で溶液重量による連続監視を行ったデータを図8-4に示します。溶液重量では、図8-3で見られた密度測定値の変動に伴う見かけ上の変動が大幅に減少します。また、蒸発に伴う減少量を正確に把握でき、液温変化に伴う液量変化の影響を受けにくいことを確認しました。

以上のことから、正確かつ安定して溶液の総量を把握できる溶液重量監視は、溶液監視の有効な手法であると考えます。


●参考文献
Hosoma, T., Mukai, Y. et al., Reduction of Fluctuation and Small Bias Observed in Continuous Volume Monitoring taken in an Annular Tank for Plutonium Nitrate, Symposium on International Safeguards: Addressing Verification Challenges, (IAEA-CN-148), Vienna, Austria, 2006, p.192-194.