図8-5 溶液測定・監視システムの全体概要図
図8-6 ハルの測定・監視システムの全体概要図
東海再処理工場(TRP)では、日本国政府及びIAEAによる保障措置の履行に積極的に協力するとともに、強化・効率化のための技術開発にも積極的に取り組んでいます。
これまでの取組みの中で、IAEA保障措置の強化・効率化を目的とした「保障措置改良計画」が査察側から提案されました。この改良計画は、4分野10項目から構成されており、査察側との度重なる協議を行いながら各項目の実施に取り組んできました。この結果、TRPに対する保障措置のウィークポイントが改善され、更に査察の効率化が図られました。
この「保障措置改良計画」によってもたらされた現行の保障措置体系は、今後TRPに導入される短時間通告ランダム査察を取り入れた統合保障措置の基盤となっています。
(1)施設の設計情報の検認に関する改良
IAEA保障措置下にあるすべての施設では設計情報質問書(DIQ)をIAEAに提供します。このDIQを基に施設に対する保障措置の実施内容が査察側によって策定されるためDIQは非常に重要な情報となります。TRPにおいても、工程図や主要槽の詳細図面を始め、工程内のプルトニウム(Pu)量やその分布,各工程の運転方法,計量方法等に関する情報を提供し、IAEA保障措置の円滑な実施に貢献しています。
また、継続的に設計情報を確認するための手順書が査察側との協議を踏まえ確立されました。この手順書を履行することにより、核物質の転用を可能にするような未申告の設計変更がなされていないことが確認でき、申告の正当性に対する保証が強化されました。
(2)保障措置上重要な槽の検認に関する信頼性の改良
保障措置上重要なPu製品を計量又は貯蔵する槽の液量などを監視する既存システムに、不正改ざん検知機能と査察側による検証機能を付加し、更に保障措置上重要な入量計量槽を追加した溶液測定・監視システムを開発しました(図8-5)。本システムにより、査察側が独自にPu溶液の容量を測定でき、更に不正な溶液変動がないことをモニタリングすることが可能になり、Pu溶液の取扱いに関する更なる透明性の向上が図られました。
(3)廃棄物検認方法の確立
使用済燃料を溶解した際に溶け残る燃料被覆管(ハル)に付着する微量核物質を測定するための非立会型非破壊測定システムを米国ロスアラモス国立研究所と共同で開発しました(図8-6)。本システムにより、廃棄物に対する計量査察が可能となったことから、TRPの受払間差異(SRD:核燃料物質量の原子炉とTRPデータとの差)の要因の一つを明確にできたとともに非立会システムであるため査察の効率化にもなりました。
(4)核物質計量に関する改善
SRDの要因を調査し、使用済燃料の核的損耗量(放射性崩壊によるPu量の減少)や高放射性廃液中の不溶解残渣に含まれる微量核物質の分析方法の確立などの再評価により、SRDを改善しました。この改善を通じて計量管理の精度の向上が図られました。