9-1 熱影響が少なく狭隘構造にも適用可能な切断技術

−アブレイシブウォータージェットによる炉内構造物の解体−

図9-2 小型アブレイシブウォータージェットのカッティングヘッド

図9-2 小型アブレイシブウォータージェットのカッティングヘッド

 

図9-3 切断状況(圧力管,カランドリア管の二重管構造同時切断)

図9-3 切断状況(圧力管,カランドリア管の二重管構造同時切断)

 

図9-4 ノズル回転速度と研掃材供給量の関係(厚肉二重管構造の例)

図9-4 ノズル回転速度と研掃材供給量の関係(厚肉二重管構造の例)


原子炉施設の解体において考慮すべき事項の一つに、放射性物質の拡散を防ぐこと(汚染拡大防止)があります。施設の解体のために構造材を切断すると、材料が熱によって蒸発したり溶けたりしてヒュームやドロス等が発生することがあります。一般構造物であれば特に問題はないのですが、原子力施設の構造物の場合には、ヒューム等に放射性物質が含まれる可能性があるため、できるだけそれらの発生の少ない切断方法を選択する必要があります。また、施設の解体時には、配管等が入り組んだ複雑で狭隘な構造物が対象となる場合もあることから、それに適用可能な切断方法である必要があります。

以上のことを考慮し、「ふげん」原子炉構造物の切断方法として、比較的カッティングヘッドが小型であるアブレイシブウォータージェット(AWJ)を候補の一つとして挙げました。AWJは、高圧(200〜400MPa)の水を鉱石等の砥粒(研掃材)とともに噴射させ、水及び研掃材の持つ運動エネルギーにより材料を切断する技術であり、熱の発生が少ない方法です。

「ふげん」原子炉構造物は、燃料を内包する管(圧力管等)が林立した狭隘な構造であることから、それらの炉内構造物の解体においては、管内から切断を行う必要があります。このため、圧力管内に挿入可能なカッティングヘッドを開発し(図9-2)、「ふげん」の炉心に最適な切断条件を試験によって求めました。試験では、「ふげん」の炉内構造物である圧力管とカランドリア管の二重管構造を模擬した試験体を用いて、実解体を想定した水中環境下で切断を行いました。

この結果、ドロス等を発生させることなく、二重管構造(内管及び外管)を同時に切断可能であること(図9-3)、また、使用する研掃材の量とノズル回転速度(切断速度)の関係は、高圧水と研掃材の間の運動量保存及び構造部材に与える研掃材の運動エネルギーを考慮することによって表現でき、最適な研掃材供給量や切断限界速度の予測が可能であることを確認できました(図9-4)。

今後、役目を終えて廃止措置を迎える原子炉施設が順次出てくると思われますが、それらの施設の廃止措置における機器や構造物の切断にも有効な技術であり、AWJを用いた解体工法の検討に有用なデータを取得することができました。