1-7 SGで伝熱管が破損したときの複雑な現象を解析する

−SG安全評価のためのナトリウム-水反応現象数値解析コード開発−

図1-21 伝熱管破損によるナトリウム-水反応現象の発生

図1-21 伝熱管破損によるナトリウム-水反応現象の発生

図1-22 2種類の化学反応機構

図1-22 2種類の化学反応機構

図1-23 SERAPHIMコードの検証解析
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図1-23 SERAPHIMコードの検証解析


ナトリウム冷却FBRの蒸気発生器(SG)内部で伝熱管が破損した場合、管内を流れる水または水蒸気が破損口から噴出し、ナトリウム(Na)-水反応現象が発生します(図1-21)。このとき、高温・高流速(数100〜1000℃以上、数100m/s)となる反応ジェットの影響により破損部の周辺に存在する伝熱管も損傷(破損伝播)する可能性があることから、その現象解明はSGの安全評価において重要な課題となっています。本研究では、現象評価手法開発の一環として、Na-水反応現象が発生した場合の流速,温度,濃度場などを予測する数値解析コードSERAPHIMを開発しました。

SERAPHIMは、Na-水反応を伴う圧縮性多成分混相流現象を対象とする解析コードです。混相流の解析モデルとしては多流体モデルを採用しています。また、成分の移流・拡散や圧縮性を考慮するための解析手法も導入しています。化学反応に関しては、図1-22に示す2種類の反応機構をモデル化しています。破損口から噴出した水蒸気と液体Naの接触界面で起こる反応を表面反応と呼んでおり、その進行は接触界面への水蒸気拡散輸送速度に律速されるとしてモデルを構築しました。一方、液体Naは反応熱によって一部が蒸発すると考えられますが、このとき発生したNaガスと水蒸気の間で起こる反応が気相反応です。気相反応については、反応速度定数をアレニウス型の評価式により評価する解析モデルを構築しました。

SERAPHIMコードの温度場再現性を検証するため、過去に行われたNa中水リーク試験を対象として検証解析を実施しました。図1-23(a)に示すとおり、円筒容器の内部に満たされた液体Na中に、模擬伝熱管の最下部に設けられたノズルより水蒸気が鉛直上向きに噴出します。SERAPHIMコードを用いて解析を実施することで、気相体積率分布や反応生成物の存在量分布(図1-23(b))、温度分布(図1-23(c))、流速分布など実験では計測が困難な物理量を予測することができます。図1-23(c)には、試験と解析両者で得られた温度分布を比較して示しています。この図のとおり、高温領域の分布や体系内最高温度が試験結果と良く一致することを確認しました。