図2-4 緩衝材基本特性データベースの表示例 (a) データベースのトップページ
図2-4 緩衝材基本特性データベースの表示例 (b) 透水特性を一例としたデータ検索機能
図2-4 緩衝材基本特性データベースの表示例 (c) グラフ表示機能
人工バリアのうち低透水性,核種収着性,コロイドろ過性など、放射性核種の移行抑制上、多彩な機能を有する緩衝材に関して、設計や長期挙動評価で必要となる基本特性データの取得を行っています。これまで地層処分場の設計においては、与えられた地質環境条件に対して、その都度データの洗い出しや、必要に応じ複雑で手間のかかる試験を行い設計データの取得や設定を行ってきました。しかしながら、今後、実施主体が行う処分場の設計や国が行う安全審査を考慮した場合、それをより適切かつ合理的に実施できるよう、設計などに必要となるデータを体系的に整備しておくことが有益となります。
そこで、設計や緩衝材の長期健全性評価に必要な基盤情報として、緩衝材の候補材料であるベントナイトの透水性,膨潤性,熱伝導性,力学特性などをデータベースとして集約し、2005年度末に緩衝材基本特性データベースの日本語版をホームページで公開し、2006年度末には英語版を公開しています(https://bufferdb.jaea.go.jp/bmdb/)。
緩衝材基本特性データベースには、1989年から蓄積してきた各種試験研究の成果が集約されており、乾燥密度,ケイ砂混合率,試験温度,含水比,試験溶液の水質やイオン強度などといった区分で特性ごとにデータの検索が可能です。また、検索したデータは、ホームページより容易にダウンロードできるほか、各特性の傾向も視覚的に把握できるよう簡易なグラフ表示機能も有しています。更に、実験に使用したベントナイトやケイ砂、試験溶液の組成に関する情報、実験方法や条件などが記載された関連技術資料なども閲覧できるシステムとなっています(図2-4)。
現在のデータベースには、約1,820件のデータが格納されており、2007年度末には緩衝材の侵入特性にかかわるデータを新たに追加し、Web公開しました。
緩衝材基本特性データベースの利用は、海外の処分事業実施主体であるSKB(スウェーデン),NAGRA(スイス),POSIVA(フィンランド)などのほか、国内外の研究機関,大学,メーカーなど、これまで145件のユーザー登録、データダウンロード利用件数427件、グラフ閲覧件数625件があり、国内外の研究に活用されています。
このように、工学技術の基盤情報として、多彩な機能を有する緩衝材の基本的な特性データに関するデータベースを整備・公開することによって、データの利用価値を高めると同時に透明性も確保してきました。
今後は、最新データによる更新を継続するとともに、より多くのユーザーに利用していただけるよう、利用者の声を反映しつつデータベースの改良を適宜進めていくことを考えています。