7-2 沸騰流を詳しく計測

−中性子ビームで蒸気と水の三次元分布と時間変化を把握−

図7-5 中性子ビームを用いて発熱する模擬燃料集合体内部の蒸気と水の三次元空間分布及び時間変化を測定
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図7-5 中性子ビームを用いて発熱する模擬燃料集合体内部の蒸気と水の三次元空間分布及び時間変化を測定

水冷却増殖炉の燃料集合体の内部を流れる沸騰水と蒸気の空間分布と時間変化は、原子炉の冷却性能を決定する重要な因子となっています。本研究では、中性子で蒸気と水の空間分布や時間変化を観察や測定できる技術を開発して、蒸気が集まる場所の把握や沸騰流の時間変動量を解明しました。本結果から、局所的に発熱面が乾く現象が冷却限界を決定していると考えられます。

水冷却増殖炉の熱設計にかかわる重要な課題の一つが、燃料棒を稠密に配置した燃料集合体の冷却性能の評価です。燃料棒間には沸騰水と蒸気が流れており、これらの分布によって冷却性能は変わります。このため、燃料棒間の現象を把握したり冷却性能を評価するため詳しい実験データが必要です。しかし、従来の計測技術では三角格子状に配列され発熱する模擬燃料棒の間を流れる蒸気や水の分布を観察したり測定することは困難です。

そこで私たちは、金属を透過しやすく水に対して感度が高い中性子を使うことで、発熱する試験体に非接触で沸騰水の詳しい分布を観察したり計測したりできる計測技術を開発しました。研究用原子炉JRR-3を中性子源として、燃料集合体を模擬した稠密14本バンドル試験体を用いて、蒸気と沸騰水の空間分布や時間変化を調べる試験を行いました(図7-5)。空間分布を測定する技術は、中性子ラジオグラフィとCT(コンピュータ断層撮影)を融合させた新技術であり、この技術の開発により沸騰流中の蒸気や水の詳しい三次元分布が把握できました。沸騰流は時間的にゆらぎやすいため、時間変化を調べる試験も行いました。1msの時間分解能で蒸気の発生から成長の過程を調べた結果、時間平均の三次元分布データで観察された蒸気の塊は、一定周期で冷却水に押し流され、発熱面が効率的に冷却されていることが分かりました。一連の試験で得られた結果は、現象の把握とともに炉心の詳細な熱設計に用いる先進的な熱流動解析コードの検証用データとしても役立てられています。

本研究は、文部科学省からの受託研究「超高燃焼水冷却増殖炉用燃料集合体に関する技術開発」による成果の一部です。