私たちは、原子力機構が保有する施設・設備を利用して産学との連携を強化し、社会のニーズを踏まえた研究開発を推進しています。その一環として、原子力基礎工学研究部門を中核とした「原子力エネルギー基盤連携センター」を2005年度に設置しました。連携に当たっては企業や大学と連携協力協定を結び、産学と原子力機構との研究者・技術者からなる特別グループを設置します。これにより、産学からの研究者・技術者が原子力機構職員と同等の身分を有し、原子力機構内の必要なインフラ,施設・装置を利用して共同で研究開発を行うことが可能となりました(図10-1)。
2005年度には次世代再処理材料開発分野の特別グループを立ち上げました。その後、2006年度には軽水炉熱流動技術開発分野及び廃棄物中のウラン(U)・プルトニウム(Pu)の超高感度非破壊検出法開発分野においてそれぞれ特別グループを設置し、更に2007年度には高温ガス炉材料開発分野の特別グループを立ち上げました。
次世代再処理材料開発分野においては、株式会社神戸製鋼所と連携協力して、複合溶製法(CCIM-Caハライド精錬法+EB-CHR法)を開発し、それを用いて超高純度化(EHP)合金を製作し、再処理苛酷環境での耐粒界腐食性や溶接性を確認しました。また、スクラップ鋼を使用した量産技術も確立しています。
軽水炉熱流動技術開発分野では、連携企業とともに、軽水炉の経済的設計の妥当性を確かめるための試験を情報管理に配慮しつつ行っています。廃棄物中超高感度U・Pu非破壊検出法開発分野においては、廃棄体内部のUとPuの分布を正確に測定できるように高速中性子直接問いかけ法の高度化を進めています。トピックス10-1は、高速中性子の減速材を従来のグラファイトからステンレスにすることで大幅に検出限界を下げられることを見いだした成果です。また、東京大学及び株式会社IHIと連携して、手荷物中に隠匿された核物質を探知するシステムの研究開発も進めています。
高温ガス炉材料開発分野においては、東洋炭素株式会社とともに、黒鉛の寿命評価に必要な照射による物性及び強度の変化を予測するため、HTTR燃料体に用いられている平均粒径が20μmの微粒黒鉛IG-110について、三次元X線CT画像から気孔の空間座標を特定し、照射効果に影響する気孔分布の定量化に成功しました(図10-2)。