9-3 合理的なウラン廃棄物のクリアランスと処分の確立に向けて

−自然放射線量と環境中のウランの寄与を理解する−

図9-5 我が国のウラン濃度の分布(a)

(a)地表中のU-238放射能濃度の頻度分布

 

図9-5 我が国のウラン濃度の分布(b)

(b)土壌,建築資材,一般消費財の中のウラン濃度

図9-5 我が国のウラン濃度の分布

 

 

表9-3 我が国における自然放射線中のU-238系列核種からの線量の影響の推定値

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表9-3 我が国における自然放射線中のU-238系列核種からの線量の影響の推定値


核燃料サイクルのうち、製錬転換, ウラン濃縮そして燃料加工のいわゆるウラン取扱施設におけるクリアランスやそれらの施設から発生するウランで汚染された放射性廃棄物(ウラン廃棄物)の処分の検討が国レベル、そして事業者などによって進められています。

もともと、ウランは、土壌や岩石のほか、河川水や地下水などにも含まれ、環境中に広く分布しています。更には、天然資源を用いた建築資材や一般消費財にも含まれています。そこで、環境中のウランの濃度に関する文献を調査し環境中の濃度分布を把握するとともに、比較的ウランを多く含むものについて試料を入手し、測定することで確認を行いました。その結果、我が国の土壌など地表でのウラン(U-238)の濃度範囲は0.001Bq/g〜数Bq/gオーダーであること(図9-5(a))、一般消費財には濃度の高いものがあること、建築資材は我が国の土壌などの濃度範囲に含まれるということが分かりました(図9-5(b))。

また、この結果を用いて、自然放射線の中でウラン系列核種がどれくらい寄与しているかを求めるため、ウラン濃度の平均値から外部被ばく及び内部被ばくに係る線量を計算しました。その結果、我が国における自然放射線による線量の合計である平均約1.5mSv/yのうち、ウラン系列核種からの影響は、平均で約0.8mSv/yであるだろうということを明らかにしました(表9-3)。

これらの結果は、ウラン取扱施設におけるクリアランスやウラン廃棄物処分の検討に必要な基礎データとして活用されるものです。


●参考文献
佐藤和彦ほか, 環境中ウラン濃度と環境放射線への寄与, デコミッショニング技報, vol.38, 2008, p.2-10.