光医療研究連携センターでは、高強度レーザーによるレーザー加速技術を医療に応用して、従来型の加速器を用いた粒子線治療装置よりはるかにコンパクト化された革新的な小型がん治療装置(図11-1)を開発するプロジェクトを推進しています。この開発により粒子線治療の普及などの医療イノベーション(図11-2)に貢献することを目指しています。2008年度は以下の活動を行いました。
本プロジェクトは、「研究拠点」となる原子力機構と10協働機関(臨床研究:兵庫県立粒子線医療センター,レーザー開発:浜松ホトニクス株式会社,ウシオ電機株式会社,照射技術開発:株式会社東芝,モニター装置開発:株式会社島津製作所,放射化装置開発:株式会社豊田中央研究所,低侵襲医療装置開発:HOYA株式会社,株式会社フジクラ,人材育成等:日本アドバンストテクノロジー株式会社,有限会社HOC)との連携で進めています。その他、研究協力機関であるけいはんな新産業創出・交流センターなどと協力し、医療装置・施設関連企業(ITBS研究会)21社、レーザー技術関連企業(レーザー微細加工研究会)13社の研究連携体への参画を得ました。
レーザー駆動小型照射装置の開発については、レーザー加速陽子線の発生数の増大やビーム品質向上を目指した研究開発を行いました。陽子のエネルギーを向上させるため、ターゲット物質とレーザー照射条件の検討を進め、核子あたり18MeVのイオン発生を確認しました。また、細胞の照射効果の研究を開始しました。
粒子線治療装置の臨床実証については、サテライト拠点として、ファントム実験や動物実験に向けて兵庫県立粒子線医療センターの研究用照射室の整備を行い、加速器陽子線のファントム照射実験を開始しました。
光医療システムの産業応用・展開については、機械工業における金属磨耗のレーザー駆動リアルタイム計測器として放射化装置の試作,実験を行いました。また、低侵襲性医療装置を試作し、動物実験を実施し、小集光径レーザー源の開発,血流計測手法の研究などを行いました。福井県立病院との共同研究の検討を行い、臨床実証に向けた研究を開始しました。
医用に適合したレーザーシステムの実証機開発に関しては、小型,高安定性,高操作性,高信頼性を備えた高出力Yb(イッテルビウム)系レーザーシステムの実証機実現のため、要素技術開発を行い、実験棟内に試作機の組立てを開始しました。