図14-8 MOX燃料の照射試験データベースの概要
図14-9 「ふげん」照射後試験結果の表示例
エネルギー資源の有効活用のため、原子力発電所で使用済みとなった核燃料を再処理して取り出されるプルトニウムを再び燃料として利用することが進められており、プルトニウムはウラン-プルトニウム混合酸化物(MOX)として燃料に使用します。我が国では、新型転換原型炉「ふげん」で2003年3月の運転終了まで合計772体のMOX燃料集合体を破損することなく使用した実績があり、原子炉1基当たりのMOX燃料使用実績としては世界最高となっています。
私たちは、このような「ふげん」における使用実績を、今後の我が国における軽水炉でのMOX燃料利用の信頼性向上に活かすため、MOX燃料の照射試験データベース(図14-8)を構築し、「ふげん」で照射したMOX燃料集合体に加え、ノルウェーのハルデン炉で燃料中心温度、被覆管伸び、要素内圧などを測定するための炉内計装を取り付けて実施した様々なMOX燃料の照射試験データを格納しています(図14-9)。「ふげん」で照射したMOX燃料集合体のうち、ペレットピーク燃焼度が約50GWd/tまで達したPu富化度が約6wt%のMOX燃料集合体に対してMOX燃料挙動を評価するために必要な照射後試験を行い、MOX燃料の照射挙動評価に有用なデータを得ています。また、ハルデン炉で実施した定常照射試験では、ペレットピーク燃焼度約60GWd/tまで達しており、出力急昇試験では、MOX燃料がUO2燃料に比べて約10kW/m以上高い線出力(約70kW/m)まで破損することなく照射されています。さらに、日負荷追従試験においてもMOX燃料の健全性に影響のないことを確認しています。
MOX燃料の照射試験データベースの構築では、このような「ふげん」やハルデン炉での照射試験で得られたMOX燃料の照射データ及び照射後試験データとMOX燃料の製造データを系統的に整理し、また、計算コードを用いた燃料の挙動評価が容易にできるよう線出力履歴などの整備も行いました。
原子力機構では、これらのデータを経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)のIFPE(International Fuel Performance Experiments)データベースに提供し、軽水炉などでのMOX燃料利用に関して国際的に高く評価されています。今後、国内においても、軽水炉で利用されるMOX燃料の信頼性向上に資するものと考えています。