14-3 試薬を用いない新しい再処理法を提案

−ウラン・プルトニウム共晶析現象を応用した再処理プロセスの開発−

図14-6 U, Pu共晶析現象を応用した再処理プロセス
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図14-6 U, Pu共晶析現象を応用した再処理プロセス

使用済燃料溶解液を加熱することでPuの原子価を六価に調整します。この溶解液を冷却することで橙色の結晶生成物(硝酸U, Pu結晶)を得、高レベル放射性廃液と分離します(第1晶析工程)。次に硝酸U, Pu結晶を硝酸溶液に溶解し、NOxガス吹込みによりPuの原子価を4価に調整します。この溶液を冷却することで黄色の結晶生成物(硝酸U結晶)とU, Pu混合溶液を得ます(第2晶析工程)。

 

図14-7 U, Pu共晶析における原料液と結晶のPu/U比の関係

図14-7 U, Pu共晶析における原料液と結晶のPu/U比の関係

結晶中のPu/U比と原料液中のPu/U比には相関があり、Puの方がUに比べて結晶として析出しにくいことを示しています。

私たちは、次世代再処理技術として使用済燃料溶解液からウラン(U)やプルトニウム(Pu)を効率的に回収するための晶析技術の開発を進めています。晶析とは、溶質の溶解度の差を利用した分離技術であり、特別な試薬を添加することなく濃度と温度を制御することで溶液から着目成分を固体として分離するものです。高レベル放射性物質研究施設にて実施したU,Pu混合溶液を用いた基礎試験において、Puの原子価を6価に調整した場合、Pu濃度が溶解度以下であるにもかかわらず、PuがUとともに結晶として析出する現象を見いだしました。

このU,Pu共晶析現象を応用し、溶解液からUとPuを回収する主工程を晶析法のみで構成する再処理プロセスの概念を構築しました(図14-6)。特長は次のとおりです。

 

● 有機溶媒を使用しない

● 使用する薬品の種類・量が少ない

● 原理が単純で簡素な工程

● Puの単離は原理的に不可能

● 第2晶析工程でU,Pu混合溶液製品のPu/U比の制御が可能

 

短所としては、高レベル放射性廃液中に少量のUとPuが残留することが挙げられますが、ほかの湿式再処理技術との組合せにより解消できると考えています。

U,Pu共晶析メカニズムは共沈現象と類似のメカニズムであると推定しています。共沈現象において、着目成分は通常状態では可溶性であり、キャリア成分の添加試薬との化学反応による沈殿生成が誘引となり、着目成分が沈殿します。一般に着目成分沈殿物とキャリア成分沈殿物は類似の結晶構造を有しています。Pu硝酸塩としてPuO2(NO32・6H2Oの存在が知られており、UO2(NO32・6H2Oと同じ結晶構造(斜方晶)です。

U,Pu共晶析では、着目成分がPuで、キャリア成分がUです。試薬を添加する代わりに溶液温度を下げていくと硝酸Uがその溶解度に従って晶析し、それに誘引されて硝酸Puが析出していると考えられます。原料液中のPu/U比を変化させた試験を実施し、いずれの条件においても硝酸Puが硝酸Uと共晶析することを確認しました。また、結晶中のPu/U比は原料液中に比べて低下することを明らかにしました(図14-7)。

UとPuの回収率及び純度の向上が、本プロセスの実用化に向けた課題です。

本研究は、経済産業省の革新的実用原子力技術開発提案公募事業「プルトニウム・ウラン共晶析法による簡易再処理システムの開発」の成果の一部を含みます。