2-10 掘削時の計測データから坑道の安定性を評価

−堆積軟岩を対象とした情報化施工プログラムの適用−

表2-2 計測項目とデータの活用先

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表2-2 計測項目とデータの活用先

 

 

図2-24 情報化施工フロー概念図
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図2-24 情報化施工フロー概念図

 

図2-25 覆工コンクリート応力の経時変化図と測点
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図2-25 覆工コンクリート応力の経時変化図と測点


地下施設の建設においては、原位置岩盤の不均質性により、地下深部での地質環境を事前の調査によって正確に把握することは困難です。このため、安全かつ合理的に地下施設を建設するには、掘削段階において、切羽観察結果及び周辺岩盤や支保工に発生する変形・応力計測データから坑道の安定性について評価するとともに、随時設計・施工へフィードバックする情報化施工が重要な役割を担います。

幌延深地層研究計画における地下施設の周辺岩盤は、主に新第三紀堆積岩(珪藻質泥岩及び珪質泥岩)からなり、強度の面からは軟岩として位置づけられます。堆積軟岩を対象とした情報化施工の事例は少なく、坑道掘削の開始に当たっては、事前設計に基づき、計測計画並びに情報化施工プログラムを策定しました。

計測計画については、(1)安全かつ合理的な地下施設建設のための情報化施工,(2)坑道の設計・施工技術の高度化に向けた研究開発,(3)掘削前に予測した深部地質環境モデルの妥当性確認という目的別に計測項目を抽出し、表2-2に示すように各計測データの活用先について取りまとめ、運用しています。

また、(1)の情報化施工のためのプログラムについては、現切羽での支保パターン選定及び既設支保の安定性評価を目的とした日常管理計測、挙動予測解析モデルの妥当性確認及び後続施工箇所の設計へのフィードバックを目的としたステップ管理計測に大別して、具体的手順を取りまとめ、運用しています。情報化施工プログラムのフロー概念図を図2-24に示します。

計測結果の一例として、換気立坑の深度177mにおける覆工コンクリート応力の経時変化を図2-25に示します。4箇所の測点ともすべて事前設計で設定した許容応力度(6MPa)以下で収束し、既設坑道は健全な状態であること、最大応力であるCC4の値は許容応力度並びに挙動予測解析値とほぼ同値であることが分かりました。また、当地点においては、事前調査結果より、岩盤内の最大主応力方向が東西方向、最小主応力方向が南北方向である(主応力比1.4倍)偏圧の影響から、CC3,4の値はCC1,2の値に対して約1.3〜1.5倍大きくなることも分かりました。以上のことから、事前設計における地下施設の支保選定は妥当であることが確認されました。

今後も引き続き、計測データの取得並びに分析・評価を行い、事前設計の妥当性を確認するとともに、後続箇所の設計・施工へ反映させていきます。