2-9 地下水の長期観測データから見えること

−堆積岩を対象とした間隙水圧長期観測データの解析−

図2-21 モニタリングシステム設置位置図

図2-21 モニタリングシステム設置位置図

 

図2-22 BAYTAP-G(※Tamura, Y. et al., Geophysical Joural International vol.104, 1991参照)入力データ及び抽出データの例(HDB-6孔:深度585-620m)
拡大図(217KB)

図2-22 BAYTAP-G(※Tamura, Y. et al., Geophysical Joural International vol.104, 1991参照)入力データ及び抽出データの例(HDB-6孔:深度585-620m)

 

図2-23 深度400mレベルの同一地下水変動域模式図

図2-23 深度400mレベルの同一地下水変動域模式図


幌延深地層研究計画の第一段階(地上からの調査研究段階)で掘削したボーリング孔に、地下水の間隙水圧のモニタリングシステムを設置し、間隙水圧の観測を継続しています(図2-21)。現在、坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第二段階)を進めており、立坑や横坑の掘削の進捗に伴い、地下施設周辺の地下水の間隙水圧は、大きく変動することが予想されています。このことから、坑道掘削前の間隙水圧分布を把握した上で、坑道掘削時に生じる地下水の間隙水圧の変化を観測することによって、地下水の流れ方(方向や速さなど)の特徴を明らかにできると考えられます。

図2-22(a)に坑道掘削前の間隙水圧の長期観測データ(2005年3月〜2006年8月)の例を示します。観測データには、大気圧や地球の潮汐の影響による変動などが含まれるため、これらを除去するために潮汐解析プログラムBAYTAP-Gを用いて解析を行いました。48区間の間隙水圧の観測データについて解析を実施した結果、分離された潮汐変動成分は0.01〜0.08kPa、気圧変動成分は0.05〜0.6kPa程度であることが分かりました。観測データの多くで、気圧変動成分と比較して潮汐変動成分は全体的に値が小さく、本地域では潮汐による間隙水圧への影響は最大でも0.1kPa未満と推定されます。このような変動成分を除去することにより、地下深部における地下水の流れに関与すると考えられる間隙水圧を得ることができます(図2-22(b))。

次に、これらの変動成分を除去したデータを用いて、各ボーリング孔において観測された坑道掘削前の間隙水圧の相互関係に関する解析(相関解析)を行いました。その結果、深度約400mでは、HDB-3孔,HDB-6孔,HDB-7孔,HDB-8孔で長期にわたり観測された間隙水圧の相関係数が互いに高いことから、これらのボーリング孔周辺の領域は、深度400m付近では同じ地下水の流れ方を示す環境である可能性が示唆されました(図2-23)。


●参考文献
Nakajima, M., Seno, S., Toida, M., Kunimaru, T., Sensitivity Analysis on Influence Factors of Pore Water Pressure Fluctuation in Horonobe Site, Proceedings of 36th International Association of Hydrogeologists congress (IAH 2008), Toyama, Japan, 2008, p.1170-1178.