図2-12 土岐花崗岩体中の岩相断面図
図2-13 土岐花崗岩体中のSiO2濃度の空間分布
結晶質岩である花崗岩体の貫入・定置といった形成プロセスを理解することは、大陸地殻の進化を解明する上で重要な課題です。花崗岩体はそれ自体が大陸地殻の多くの部分を占める岩石であるとともに、花崗岩質マグマが貫入して周囲の岩石に放出する熱は、大陸地殻を構成するもうひとつの主要な岩石である変成岩の形成に深く関与します。つまり花崗岩体は大陸地殻の進化をひも解くカギなのです。また、これらの形成プロセスの相違がもたらす花崗岩体の岩相や化学組成の違いは、岩体の物性に影響を与え、ひいては岩体の割れ目の形成に影響を与えます。このため、本研究は地層処分システムの安全評価においても重要な課題です。
本研究では、中部地方に位置する土岐花崗岩体の19本のボーリングコアから得た岩石試料から、岩体中の岩相の相違(構成鉱物の種類,量比,形状等の相違)と化学組成の空間分布を明らかにし、これを通して花崗岩体の形成プロセスについて考察を行いました。
岩相の空間分布(図2-12)によって、土岐花崗岩体は、周縁部から内部へ向かって白雲母黒雲母花崗岩相(MBG)から、ホルンブレンド黒雲母花崗岩相(HBG)、黒雲母花崗岩相(BG)へと推移する累帯深成岩体であるということが分かりました。また、図2-13は、土岐花崗岩体中のSiO2濃度の三次元パターンです。このSiO2濃度分布は、土岐花崗岩体の周縁上部と中央下部で高く、その中間で低い傾向を示します。周縁上部の高濃度域はMBG、中央下部の高濃度域はBG、そしてその中間の低濃度域はHBGにほぼ相当します。このように岩相と化学組成は関連して変化しているのが分かります。
このような岩相と化学組成の変化は、形成プロセスに対する二つの可能性を提示します。一つ目は、高温のマグマが周囲の岩石(母岩)を溶かし込むことにより、母岩と接する周縁部では、マグマ由来の本来の特徴から、母岩に近い特徴へ変異した可能性(地殻の混成作用)です。二つ目は、それぞれの岩相が、単一のマグマから供給されたものでなく、特徴の異なる各々別のマグマが同時期に貫入した可能性(マグマの同時期貫入)です。
本研究の成果は、同位体や微量元素を用いた検討を加えることにより、更に踏み込んだ形成プロセスの議論が可能です。また、地層処分システムの安全評価において重要な岩体中の割れ目・断層の分布や特徴などの理解にあたっても、今回の研究の成果を反映させることが可能であると考えています。