3-5 幅広いアプローチ活動におけるサテライト・トカマク計画事業の進展

−先進超伝導トカマクJT-60SAの日欧共同建設の開始−

図3-13 JT-60SAの鳥瞰図

図3-13 JT-60SAの鳥瞰図

トロイダル磁場コイル,平衡コイル,中心ソレノイドから成る超伝導コイル及び真空容器が、熱遮へい板を装着したクライオスタットに包まれており、その回りに、追加熱装置として負及び正イオン源中性粒子入射装置,電子サイクロトロン加熱装置が配備されます。

 

図3-14 JT-60SAの断面図

図3-14 JT-60SAの断面図

真空容器内には、プラズマの水平及び垂直位置を安定に保つための高速プラズマ位置制御,誤差磁場補正及び抵抗性壁モード制御のための銅コイル,ダイバータカセット,安定化板等が設置されます。

 


2007年に始まった日欧間のBA協定により実施されるサテライト・トカマク計画事業と我が国の国内計画の下、先進超伝導トカマクJT-60SAを建設し運転するJT-60SA計画が、那珂核融合研究所で進められています。JT-60SA計画のミッションは、ITERへの支援及び原型炉へ向けた研究を行い 、核融合エネルギーの早期実現に貢献することです。JT-60SAは 、プラズマ電流5.5 MA,主半径約3m,トロイダル磁場強度2.25Tにおいて臨界プラズマ条件クラスの超高温重水素プラズマを電流拡散などのプラズマ特性時間よりも長い100秒間維持できる装置で 、原型炉に想定される高プラズマベータ条件での完全電流駆動の実証を追究し、能動的なプラズマ安定化を行い、 ITERで想定される高プラズマ密度でのHモード閉じ込めを実証するための先進的な機能を有しています (図3-13)。

2007年12月に、コスト課題の解決のためJT-60SA計画の再設定を開始しました。設計の見直しに際しては、若干低いアスペクト比(約2.6から2.5へ)を採用することにより、上記プラズマ性能を確保しつつ、高ベータプラズマと両立するダイバータ形状の最適化を含めプラズマ配位の実現可能領域を拡張し、高ベータプラズマの生成に有効なプラズマの形状制御性を高めました(形状係数約7,非円形度約1.9,三角形度約0.5)。また、100秒間にわたる41MWの高パワー加熱,5.5MAのプラズマ電流の維持、そして500keVの負イオン源中性粒子入射加熱を確保しました。更には、真空容器内に、高速プラズマ位置制御コイル並びに高ベータプラズマの実現に不可欠な抵抗性壁モード安定化用コイル、そして遠隔保守機能を備えたダイバータ機器を設置する設計を実現しました(図3-14)。

この新設計は、JT-60SAのミッションを保持しつつ、コスト及び設計の課題を克服しただけでなく、設計の進捗により追加された要求を満たし、装置の柔軟性をより高めたものとなり、2008年12月にJT-60SA計画の再設定は 成功裡に完了しました。日欧の実施機関である欧州のF4E(Fusion for Energy)及び原子力機構の間で締結された調達取決めに基づき、2009年には、那珂核融合研究所における超伝導コイル製作用建家が竣工し、製作工場において真空容器の試作開発が始まるなど、機器の製作が開始されました。このように、JT-60SA計画は2016年のファーストプラズマを目指し、その完成に向けて大きな一歩を踏み出しました。