図12-1 主要核特性の解析結果
図12-2 原子炉出力と冷却材温度の推移
高速増殖原型炉もんじゅは、1995年12月に発生した2次主冷却系ナトリウム漏えい事故後、運転を停止していましたが、2010年5月6日に原子炉を起動して14年5ヶ月ぶりに性能試験を再開し、5月8日に臨界に到達しました。性能試験は三段階に分けて実施する計画で、その第一段階を「炉心確認試験」と呼び、炉心の安全性確認や研究開発目的で炉心及びプラントのデータを取得するな ど、全20項目の試験を78日間にわたって実施し、7月22日に終了しました。
炉心確認試験では、基本的な核特性として臨界性、制御棒価値を測定し、過剰反応度や反応度停止余裕といった安全上の技術基準を満足することを確認しました。さらに、冷却材(Na)の温度や流量の変化による反応度変化の測定、反応度印加時の炉心の自己安定性確認、高速炉の未臨界度測定を検討する試験、超音波温度計による冷却材温度測定など、研究開発を目的とした試験を行いました。その他、プラント内外の空間線量当量率、冷却材やカバーガス(Arガス)の純度、1次主冷却系循環ポンプのフローコーストダウン特性を測定しました。
炉心確認試験の炉心は、長期停止に伴い燃料中の241Puの壊変により生成した241Amを炉心平均で約1.5 wt%含有しており、臨界性等の核特性を精度良く解析することは困難が予想されたので、その精度を検証しました。図12-1に結果を示します。私たちがFBR開発の中で整備してきた実証炉設計等に用いる「詳細解析手法」の解析値は、測定値と実験誤差内でおおむね整合した結果であり、解析値を補正せずとも目標精度を達成できることが分かりました。また、「もんじゅ」の運用に用いる炉心管理コードも、既知炉心の解析値と測定値の差で補正すれば実用上問題ない精度であることが確認できました。炉心の自己安定性については、図12-2に示すとおり、制御棒引抜によりステップ状に反応度が印加された後に出力は上昇しますが、上昇を抑える操作をしなくても、燃料温度の上昇によるドップラ効果等で約20〜40分後にピークを打ち、その後静定することを確認しました。
「もんじゅ」の運転再開により、臨界実験では得られないデータを多数取得できました。特にAmを多く含む核特性データは世界的にも希少なものです。これらデータは、トピックス1-7(p.17)のようなFBRの実用化に使用されます。