図12-6 発汗現象の概略図
図12-7 精製前及び精製後のUNH結晶
高速炉燃料を対象とした先進湿式再処理法の一環として晶析法の研究を行っています。この晶析法は、燃料溶解液に含まれているウラン(U)を硝酸ウラニル六水和物(UNH)結晶として分離できます。一般に晶析法では、結晶成長過程において液体不純物が結晶中に液胞として取り込まれます。結晶表面に付着した液体不純物は洗浄により除去できますが、結晶に内包された液体不純物は洗浄では取り除くことができず、結晶の純度を下げる要因となります。この内包した液体不純物を除去できれば、除染係数(DF)のより一層の向上が期待できます。そこで、一般産業界でも利用されている結晶精製法のひとつである発汗法の適用を検討しています。発汗は、結晶を融点近くの温度に加温することにより、結晶に内包された液体不純物が結晶外へ吐き出される現象であり、これにより結晶純度が向上します(図12-6)。燃料溶解液には、一般産業界で対象とされている物質に比べて多くの元素が含まれており、またUNH結晶は温度により化学形態が変化しやすいため、発汗法をUNH結晶へ適用する場合はこれらの特徴を考慮する必要があります。
バッチ式の発汗精製試験を高レベル放射性物質研究施設(CPF)において実施しました。混合酸化物(MOX)燃料溶解液に液体不純物としてユウロピウム(Eu)を添加しました。この溶液を冷却して回収したUNH結晶を更に硝酸溶液で洗浄した後、発汗効果により精製するためにバイアル瓶に入れ、ウォーターバスにおいて一定温度に保持しました。発汗操作後、U融液とUNH結晶から排出された液体不純物がバイアル瓶の下部に溜まっていました(図12-7)。バイアル瓶の上部の結晶は、Euの内包量の低下が認められました。本研究において、発汗効果を用いた精製法の適用性を確認するとともに基礎的な特性に関する知見も得られました。
発汗精製のプラント用機器は、向流多段型の結晶精製装置(KCP)が開発されています。この装置は精製塔上部のメルターによって一部のUNH結晶を融解し、精製塔下部から上部へ移送されるUNH結晶を上部から流れるU融液により連続的に洗浄します。発汗作用に洗浄効果が加わるため、バッチ式に比べて更なるDFの向上が期待できます。
本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業 「晶析工程における結晶精製技術に関する研究開発」の一環として実施したものです。