12-4 MOX燃料ペレットの物性値を効率良く調整

−残留炭素によるMOX燃料ペレットのO/M比調整技術の開発−

表12-1 主な試験条件

四つの試料について熱処理雰囲気の水素分圧と水分圧の比をパラメータに熱処理を行いました。このうち試料4は炭素を含まない試料であり、試料3と比較することで炭素の影響を知ることができます。

 

表12-1 主な試験条件

 

図12-8 脱脂処理後ペレットの炭素含有率と焼結ペレットのO/M比

図12-8 脱脂処理後ペレットの炭素含有率と焼結ペレットのO/M比

現行のペレット製造方法の結果を示します。脱脂処理後ペレットの炭素含有率に応じて、焼結後のO/M比が低下することが分かります。

 

図12-9 焼結中のペレットのO/M比変化

図12-9 焼結中のペレットのO/M比変化

残留炭素を含む試料ではO/M比は焼結時の温度保持中に最小値を示しましたが、残留炭素を含まない試料(試料4)では温度保持終了まで減少が続きました。

 

図12-10 炭素及び雰囲気ガスのエリンガム図

図12-10 炭素及び雰囲気ガスのエリンガム図

1500 ℃では、雰囲気ガスよりも炭素の酸化反応と平衡となる試料のO/M比の方が低いことから、炭素によりペレットのO/M比を効率的に低下できることが分かりました。

簡素化ペレット法では、150 GWd/tの高燃焼度時における被覆管の内面腐食を防止するため、低O/M比(酸素-金属原子数比)のMOX燃料ペレット(ペレット)の製造を目標としています。低O/M比のペレットは、焼結したペレットを還元雰囲気中で熱処理することで得られますが、この方法では目標とするO/M比に達 するまでに長時間を要するというデメリットがあります。

一方、現行の燃料製造法のように有機添加剤を原料粉末に添加して製造する場合、800 ℃の還元雰囲気で脱脂処理しても約3000 ppmの炭素が残留します。このような炭素を多く含むペレットを1700 ℃で焼結すると、炭素により還元されO/M比が低下することが経験上知られていました。(図12-8)

このような背景から、ペレット中に残留する炭素を利用し、低O/M比に調整する技術の開発に取り組みました。

表12-1に示すとおり、残留炭素を含むペレット(試料1〜3)と含まないペレット(試料4)を水素分圧と水分圧の比の異なる雰囲気中で1500 ℃に加熱し、加熱中のペレット重量の変化からO/M比の変化を観察しました。結果は図12-9に示すとおりで、残留炭素を含む試料ではO/M比は焼結時の温度保持中に最小値を示しましたが、残留炭素を含まない試料では温度保持終了まで減少が続きました。図12-10には、炭素及び雰囲気ガスのエリンガム図を、1500 ℃における平衡となる試料のO/M比とともに示します。1500 ℃のC+1/2O2→CO反応と平衡となる試料のO/M比は1.939ですが、雰囲気ガスA〜Cと平衡となるO/M比はこの値より高いことが分かります。すなわち、残留炭素を含む場合、炭素による還元反応が支配的となり試料のO/M比は低下しましたが、炭素が消費されると雰囲気ガスと平衡となるO/M比に近づくように上昇したものと考えられます。これに対し、炭素を含まない場合、4時間の温度保持では平衡に達せず、O/M比が低下し続けたと考えられます。

これらの結果から、残留炭素の還元力は雰囲気ガスよりも強く、ペレットのO/M比をより短時間で低くできることが分かりました。このことから、ペレットの大量生産で雰囲気ガスの酸素ポテンシャルの不均一性が問題となる場合や、短時間でのO/M比調整が必要な場合に、ペレット中に意図的に炭素成分を含有させる方法が有効となる可能性があることが分かりました。