12-7 危険物取扱施設の安全性向上に向けた取組み

−IFMIF/EVEDAリチウム試験ループにおける漏えい対策の構築−

図12-16 試験ループ全景

図12-16 試験ループ全景

高さが4階建てビルに相当する液体リチウム試験ループ(Li保有量2.5 t)です。

 

図12-17 Li漏えい検出器の施工

図12-17 Li漏えい検出器の施工

確実に漏えいを検知できるように漏えい検出器の取付け方を工夫しました。

 

図12-18 消火に必要な薬剤散布量

図12-18 消火に必要な薬剤散布量

Li液深の約1.5倍の厚さに相当する薬剤量を散布することで消火可能であることが判明しました。

大洗研究開発センターでは、核融合研究開発部門と連携を図りながら、国際核融合材料照射施設(IFMIF)の中性子発生源となるリチウムターゲット施設に関する各種実証試験を行うことを計画しています。この試験に使用するIFMIF/EVEDA液体リチウム試験ループ(図12-16)は、消防法に定める危険物第3類のリチウム(Li)を多量かつ高温で取り扱う国内外でも例のない大規模なものです。その設計・建設にあたっては、配管や機器からの万が一のLiの漏えいやそれに伴う燃焼を想定した安全対策を構築することが必要不可欠です。そこで、Liと危険物の類を同じくするナトリウムを冷却材に使用する高速増殖炉の技術開発から得た経験や技術知見を活かし、多岐の項目にわたる安全対策を本試験ループに施しました。以下にその代表的な事例を紹介します。

(1)Li 漏えいの確実な検知 : 本試験ループを構成する配管の総延長は数100 mにも及び、かつ配管の溶接部は500箇所以上もあります。そこで、本試験ループの主要機器・配管には、導電性のLi とセンサーが接触して電気回路が構成されることで漏えいを検知するシンプルでかつ信頼性の高い 「接触型漏えい検出器」を採用しました。また、漏えいの早期検知の観点から、水平配管についてはその設置を周方向120°間隔と密に配置させ、鉛直方向配管では溶接線に巻き付け るような引き回しとする工夫を凝らしました(図12-17)。

(2)漏えいLi の燃焼範囲の抑制 : 高温のLi がコンクリートと接触すると激しく化学反応を起こすことから、それを防止するために鋼鉄の板で床面を覆いました。また、漏えいしたLiの拡散範囲や発火したLi の燃焼範囲抑制の観点から、床面は溜め枡構造として区画化を図りました。

(3)消火剤の配備 : 消防法で定められる消火剤(乾燥砂や膨張真珠岩など)より、塩化ナトリウムを主成分とする消火薬剤の方が優れた消火性能を有することが比較実験により分かりました。また、その比重がLi のそれより大きく、散布した消火薬剤の一部が燃焼 Li 中に沈むことから、この挙動を十分に考慮して消火薬剤の配備量(図12-18)や上記(2)の溜め升構造の堰の高さなどを決定しました。

本試験ループは、2010年11月に製作を完了し各種実証試験に必要な基本性能を有することを確認しました。今後、本試験ループを活用した実証試験を実施していきます。