3-12 核融合原型炉材料の実証のために

−世界最大のIFMIF/EVEDAリチウム試験ループの設計と建設−

 

図3-27 完成したIFMIF/EVEDA液体Li試験ループ

図3-27 完成したIFMIF/EVEDA液体Li試験ループ

Li保有量は2.5 t(5000 L)、高さ20 m×幅15 m×奥行き15 mの3フロア構造であり、最上部の密封容器内に試験部であるターゲットアッセンブリがあります。

 

図3-28 ターゲットアッセンブリの構造(単位 mm)

図3-28 ターゲットアッセンブリの構造(単位 mm)

流入口から流れ込んできたLiは整流器、2段ノズルを通って、高流速のLiターゲットになり、背面壁を流れます。

 

図3-29 Liターゲットの様子

図3-29 Liターゲットの様子

性能試験では、最終的にLiターゲットの流れを生成することに成功し、安定に流れることを確認しました(図3-28中の観測窓を通して、CCDカメラで撮影しました)。

核融合炉に用いる材料を開発するためには、候補材料に対して中性子による損傷を評価する必要があります。それに向けて、材料の照射試験を行う施設「国際核融合材料照射施設」(IFMIF)の工学実証・工学設計活動(EVEDA)が、BA活動のひとつとして実施されています。IFMIFはリチウム(Li)と重水素の核反応を利用した加速器駆動型の中性子照射施設で、重陽子ビームが的(ターゲット)になる溶融Li中に入射され中性子が発生します。EVEDAでは、Liターゲット施設の主要テーマとして、IFMIFのLiターゲット施設を模擬したEVEDA Li試験ループ(ELTL)を建設しました。今後、約2年間に渡ってELTLを試験運用することで、将来IFMIFを建設する際に必要なデータを取得し、実機の工学設計を完成させることを目的としています。

ELTLは、2009年からおよそ2年をかけて大洗研究開発センター建屋内での建設及び機能試験を終え、2011年3月10日に完成しました(図3-27)。ELTLは、約300 ℃に加熱した約2.5 tのLiを、ターゲットアッセンブリ(TA)において平均流速15 m/s,厚さ25 mm,幅100 mm(IFMIF実機の約1/3)で流し、帯状のLiターゲットを作ることができる装置です。TAはELTLの最上段に据え付けられており、Liがノズルから吐出され背面壁に沿って流れる構造になっています(図3-28)。2段ノズルの形状は流体理論から導き出されたもので、最大20 m/sの流速においてもターゲットの流れを安定に保つことができます。Liは円弧状の背面壁に沿って高速で流れることにより、遠心力が与えられ、重陽子ビームの熱による沸騰を防ぐ設計となっています。

工事完了後に行われた機能試験では、(1)Liインゴットの装置内への充てん,(2)ループ内へのLiのチャージ,ドレン運転,(3)Li循環試験、などを実施しました。(3)では、本装置の各機器単体としての性能試験を実施し、要求性能を満足することを確認しました。最終的には、アルゴンガス中(0.12 MPa)において、流速5 m/sの条件のもと、安定なLiターゲットを作り出すことに成功しました(図3-29)。今後は、Liターゲットの安定性やLi中の不純物除去について調査し、IFMIFの工学設計に反映する計画です。