図5-14 MOX燃料を対象とした同位体組成測定試験での燃料サンプル取得位置
表5-1 図5-14で示された燃料サンプルの破壊試験で得られた同位体組成をSWATシステムによって解析した結果の例
核燃料の中では核分裂や中性子捕獲などの核反応によって多くの同位体が生成され、それらは核反応や放射性崩壊によっても様々な同位体に変化し、含まれる放射能量は時々刻々と変化していきます。この同位体量を正確に求めることは、原子炉の臨界性の評価や、核燃料の放射能や発熱量の正確な把握に必要です。そのため私たちは統合化燃焼計算コードシステムSWATを開発してきました。
このシステムは、原子力機構が開発した核計算コードSRACやMVPにより燃焼中の核燃料の中性子反応断面積を求め、広く利用されている燃焼計算コードORIGEN2に取り入れる構成です。更にこのシステムは核分裂の結果生成される核分裂生成物(FP)の生成割合や、その放射性崩壊の半減期のデータも最近の核データ評価の結果を反映するため、原子力機構が開発したJNDC核分裂生成核データライブラリ第2版やJENDL核分裂生成物崩壊データライブラリ2000のデータを内蔵しています。これらの工夫により、ウランやプルトニウムのようなアクチニドと呼ばれる重元素やFPの生成消滅量を、使用可能な最新データを用いて求めることが可能です。燃焼後の核燃料から取り出された燃料ピンを切断・溶解することによって得られたサンプルの取得位置を図5-14に、ここで示されたサンプルを用いた破壊試験で得られた同位体組成の測定データをSWATで計算して比較した結果を表5-1に示したとおり、SWATは主要同位体の同位体組成を5%以内の差で予測可能です。
更にこのSWATシステムで作成したデータライブラリを内蔵させておくことでORIGEN2コード単独でもSWATシステムと同等の詳細な同位体量の評価が可能なシステムORIGEN22UPJも開発しています。これは、SWATと同等の計算結果を与えることが可能であるだけではなく、最新のコンピュータを使用すれば数秒で計算が終了するという高速性を有しています。この特徴を活かし、先般発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故時には、炉内放射能量計算システムとして事故当時に原子炉内に存在していた放射能の量を計算するために利用され、国による事故影響評価に対して貢献しました。