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10 バックエンド対策に関する技術開発

原子力施設の廃止措置から廃棄物処理処分の実施に向けて

図10-1 バックエンド対策の全体概要

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図10-1 バックエンド対策の全体概要

原子力機構におけるバックエンド対策では、放射性廃棄物の処分に関連する法令整備に係る支援業務を行うとともに、原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の処理処分、廃棄体放射能確認等の廃棄物の発生から最終処分までに関連する技術開発(廃棄体化処理技術,除染処理技術,放射能確認技術,分析技術等)を進めています。

原子力機構における原子力の研究開発を円滑に進めるためには、使命を終了した原子力施設の安全かつ経済的な廃止措置及び放射性廃棄物の放射能確認を含めた安全かつ効率的な処理処分対策(バックエンド対策)が、重要なミッションのひとつです。原子力機構は、自ら発生する放射性廃棄物のほか、大学,民間等の研究施設等から発生する低レベル放射性廃棄物(研究施設等廃棄物)の埋設処分を行う実施主体として、埋設処分業務を進めるとともに、放射性廃棄物の発生から処分までに関連する技術開発を総合的に行っています(図10 -1)。

また、これらの技術開発の成果を、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故対策へ有効に活用するため、汚染がれき等の放射能分析手法,廃棄物の安定化(固形化処理)への適用の検討を進めています。

 

放射性廃棄物の分析に係る技術開発

原子力施設等から発生した放射性廃棄物を安全に処分するためには、その中に含まれる放射性核種の種類と濃度を把握することが必要不可欠になります。

放射性廃棄物のうち表面が放射性核種で汚染された金属廃棄物を対象にその汚染面に付着した放射性物質の溶解条件と、その溶解液(Feを多量に含む溶液)に含まれる極微量のPuとAmの化学分離条件の検討を行いました。その結果、Fe(III)に対して反応当量の1.3倍以上のアスコルビン酸を加えることで、市販の抽出樹脂(TRUレジン)により、1 gのFe(III)を含む試料溶液(20 mL)からでもほぼ100%のAm回収率を得られることが分かりました。この検討結果を踏まえ、「ふげん」冷却系配管の分析に係る技術開発を進めています(トピックス10-1)。

 

放射性廃棄物の処理に係る技術開発

放射性廃棄物の処理処分において、その費用を低減すること、処分時の安全性を高めることなどが重要です。原子力機構では可燃性の放射性廃棄物を焼却し、焼却灰として保管していますが、その焼却灰にはわずかですが鉛などの重金属が含まれています。

焼却灰はセメントを用いて固形化したあと、地中に埋設処分する計画です。しかし、地下水等によりセメント固化体から重金属が溶出し、生活圏に影響を及ぼす可能性があります。このため、焼却灰のセメント固化時に不溶化剤を添加し、重金属の溶出を防ぐ技術開発を進めています(トピックス10-2)。