13-12 大深度地下500 mに到達

−瑞浪超深地層研究所における坑道掘削と湧水抑制技術の有効性−

図13-26 「瑞浪超深地層研究所」研究坑道のレイアウト

図13-26 「瑞浪超深地層研究所」研究坑道のレイアウト

両立坑深度は2012年3月31日時点の掘削深度です。

 

図13-27 先行ボーリング及び坑道掘削後の湧水量の比較

図13-27 先行ボーリング及び坑道掘削後の湧水量の比較

上図のレイアウトは、深度300 mステージにおける先行ボーリングの実施位置です。下図は、先行ボーリングにおける実測湧水量、研究アクセス坑道についての予測値と実測値のグラフです。

高レベル放射性廃棄物の地層処分の技術基盤を整備するため、岐阜県瑞浪市にある「瑞浪超深地層研究所」において花崗岩を対象とした深地層の科学的研究を進めています。研究坑道の掘削は、2011年度末で主立坑、換気立坑ともに大深度地下500 mまで到達しました。また、深度500 mの水平坑道の掘削に着手し、主立坑及び換気立坑と水平坑道との連接部分からそれぞれ5 m程度、掘削しました(図13 - 26)。

研究坑道掘削では、土木工学等で培われた技術の有効性について確認してきました。研究坑道はボーリング調査などにより掘削範囲の地質や地下水状況を把握した上で掘削しています。これまで、先行ボーリング調査により大量湧水が発生する可能性が高いことが分かった範囲を対象に、プレグラウチング(坑道掘削に先立ち掘削範囲の周辺の割れ目にセメントミルクを注入すること)により湧水を抑制しました。この技術の適用により、効率的に掘削を進めることができ、深度500 mの到達に大きく貢献することができました。ここに例示する深度300 m研究アクセス坑道では、深度500 mまでの範囲で、最大湧水量(1690 L/min、水圧も2.4 MPaと高水圧)が観測されました(図13 - 27)。このため、坑道延長(約100 m)の半分程度を対象にプレグラウチングを実施しました。図13 - 27では、湧水量の予測値と掘削後の実測値を比較しています。プレグラウチングを実施した場合の予測値(400 L/min 程度)は、坑道周辺の透水性低減の程度やセメントの注入範囲を、費用対効果も加味して計画した場合のものです。この計画に基づき施工した結果、掘削完了後の湧水量は100 L/min程度であり、計画以上の湧水抑制効果を得ることができ、大量湧水(高水圧)を伴う岩盤の湧水抑制が既存技術で可能であることを示すことができました。

また、岩盤の透水性に応じた注入材料の適用範囲の確認として、超微粒子セメントや溶液型材料を用いたグラウチング試験を実施しました。これらの結果から、透水性が高い領域(10-7 m/secオーダー以上)に対しては、普通ポルトランドセメントと超微粒子セメントを用い、透水性が低い領域に対しては、溶液型を用いることで、広範な透水性を有する岩盤の湧水抑制に効果的であることが分かりました。今後も必要に応じて湧水抑制を図り、更に地下深部へと坑道掘削を進めていくことを目指しています。