図1-45 1Fにおける汚染水の処理
図1-46 吸着剤中のSr濃度の増加
図1-47 いくつかの元素の分配係数(K d)
東京電力福島第一原子力発電所(1F )では放射性核種に汚染された水が大量に発生し、施設内に滞留しています。放射性セシウム(137Csなど)を含む汚染水は、図1- 45に示すように、Cs吸着装置においてCsをゼオライトに吸着し、逆浸透膜等によって浄化したあとに、原子炉内にある燃料の冷却に用いられています。処理後の廃液は1F内に貯槽を設けて保管されていますが、廃液の量は処理に伴い増大するので、将来は浄化した水の放射能レベルが十分低いことを確認し、環境に戻すこととなります。この時、廃液に含まれる重要な放射性核種にストロンチウム90(90Sr)があり、これは法令に定められた濃度限度が137Csよりも低く、効果的な除去技術が必要とされます。
東海再処理施設では、低レベル放射性廃液処理のためのプロセスを開発し、90Srの除去にはチタン酸系吸着剤(READ-Sr)を用います。一方、汚染水は海水を含むため、塩素とともに種々の金属イオンが共存する中から、Srを分離する必要があります。READ-Srは硝酸ナトリウム溶液を対象としていたので、海水を含む水への応用を検討しました。
READ-Sr吸着剤の特性について模擬液を用いて調べました。50%海水を含む水からのSrの吸着は図1- 46に示すように、吸着剤中のSr濃度が30分ほどの接触でほぼ吸着平衡に達するので、Srの吸着に対して実用的な吸着速度が得られることを確認しました。また、Srはアルカリ土類金属であり、同族で化学的な性質が似ているCaやMgが海水には含まれますので、Srを効率的に除去するためには吸着剤がSrに対して選択的であることが望まれます。図1- 47に示すように、分配係数(K d)は海水の混合率に幾分影響されますが、Srは吸着しやすく、また、SrとCaがMgとKに対してより選択性が高いことが分かりました。
この吸着剤をバッチ法によりCs吸着剤とともに用いる試験、カラムに充てんして用いる試験を行い、いずれの使用形態に対しても分配係数から期待されるSr除去性能を発揮することを確認しました。
1Fでの応用を目標として研究を継続していきます。