図1-50 水位計の構造図
図1-51 開発した新型水位計を用いた水位測定試験結果
軽水炉内の水位は原子炉脇に設置されたフロート式電磁誘導型水位計や電極型水位計などを用いて監視されています。東京電力福島第一原子力発電所事故においては、全電源喪失により、圧力容器内水位及び使用済燃料プールの水位が測定できなくなり、事故後の状況把握が遅れ、事故対策に大きな困難をもたらしました。
このため、全電源喪失時にも、小電力で作動可能な信頼性の高い水位計の開発を開始しました。水位計の開発にあたっては、持ち運びが可能でかつ小さな隙間からでも挿入可能であること、耐放射線性に優れていること及びバッテリー規模の電力で測定が可能であることを目標としました。まず、小型化及び耐放射線性を考慮して、可動部品や半導体部品をセンサ部に用いないヒータ付熱電対方式としました。構造としては、ステンレス管のさや(シース)中にK型熱電対素線とヒータ線を装荷してセンサ部とすることにより細径にすることができ(小型化)、かつリード部にMIケーブルを用いることにより放射線環境下でも使用可能としました。本センサは、水と空気の熱伝達率の差及び水の沸点が一定なことからセンサの測温接点が水中の時と空気中の時で温度差が生じる現象を利用して水位を測定するもので、水位計内のヒータに適切な電圧をかけ加熱することによりその温度差を大きくします(図1- 50)。
次に、開発した水位計の特性評価を行いました。ヒータに印加する電圧を1〜5 Vに変化させたときの水中及び空気中での温度変化を調べた結果、小電力で検知可能であることを明らかにしました。また、図1- 51に印加電圧5 Vにおける常温及び高温(90 ℃)における水位測定試験結果を示します。この結果、開発した水位計は水中と空気中で大きな温度差を示すとともに、水位が20 mm程度の誤差で測定可能であることが示されました。さらに、実際に原子炉施設での使用を考えた場合、センサ部から非常に離れた位置で計測を行う必要があるため、100 mのMIケーブルを接続した水位計の性能についても実証しました。
これらの成果により、開発した水位計は小型で可搬性があり、バッテリー規模での小電力でも水位を測定できることを明らかにしました。また、熱電対やヒータは、シース型を用いることから、JMTRでの耐放射線性の実績もあり、測定部が高放射線環境下かつ高温、計測者が測定器に近づけないという過酷環境下でも使用可能な新型水位計の開発に成功しました。